今、改めて問う、トランプを選んだアメリカの本質
トランプ勝利の根因、「反知性主義」とは何か

(U-ONE TV『KMSビューポイント』第35回より)

トランプを選んだ米国の本質
(3)トランプ氏に影響を与えたピール牧師

ナビゲーター:木下 義昭

 さて、ここで、トランプ大統領に大きな影響を与えたニューヨークにあるマーブル協同教会(Marble Collegiate Church)のノーマン・ヴィンセント・ピール牧師についてお話ししましょう。
 ピール牧師は同教会の首席牧師として52年間奉仕しました。トランプ大統領の精神的な支えはキリスト教にあり、父親と通っていたのがマーブル協同教会です。トランプ氏は、幼少の頃から父フレッドに連れられて、日曜日になると家族で教会に足を運んでいました。
 トランプ大統領は、自伝の中で次のように書いています。
 「ピール牧師の説教はいつも終わってほしくないと思っていました。もっとずっと教会にいて聞いていたかった」
 このように、ピール牧師は、トランプ氏がいまだに敬愛してやまない「心の師」と仰ぐ人物なのです。

▲ノーマン・ヴィンセント・ピール牧師(Wikipediaより)

 ピール牧師の後継の牧師はこう証言しています。
 「トランプ氏は本当にピール牧師に心酔していましたから、キリスト教の精神を全身で受け止めたと思います」
 ピール牧師は1993年に他界していますが、ピール牧師こそトランプ氏に大きな影響を与えた人物の一人なのです。トランプ大統領は、最近のメディアとのインタビューでも、「私こそがピール牧師の最高の生徒だと自負している」と発言しています。

 ピール牧師はアメリカに多数あるプロテスタント教会の一牧師という人物ではありません。国内では大変著名で、アイゼンハワー大統領やレーガン大統領にも説教をしたことでも知られ、著書『積極的考え方の力』(初版1952年)は世界60カ国以上に翻訳され、すでに2000万冊以上が世に出ています。
 同書は、神への信仰を中心にした精神活動から、キリスト教をいかに実生活へ有効に応用させて成功を遂げるかを説いています。そのキーワードは「積極性」です。ピール牧師の「積極的な考え方」は、今日、スポーツ、科学、政治、教育、職業あらゆる分野に浸透しています。テレビ、ラジオ、講演、寄稿などでも幅広く活躍しました。ピール牧師は人々を活性化し、愛と幸せ、繁栄の社会建設に貢献したのです。1984年、レーガン大統領から米国市民最高の賞 「自由勲章」が贈られています。

 ピール牧師は、「トランプは自分の最高の弟子」と称賛しました。そのトランプ氏を目当てに若い女性が教会に急増したという逸話もあるほどです。
 トランプ氏は自伝に「不動産交渉の時、私の優先事項は常にポジティブでいるということだ。たとえ周囲にいる全員が否定的な考え方をしていても、私だけは積極的でいる」と記しています。(続く)

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