青少年事情と教育を考える 2
子供のネット依存、解決のカギは「父性」にある

ナビゲーター:中田 孝誠

 現代の子供たちを巡る大きな問題の一つに、インターネット依存があります。厚生労働省が2012年に行った調査によると、ネット依存の中高生は全国に推計518千人。現在はさらに増えていると思われます。スマートフォン(スマホ)が急速に普及する現在、「ネット依存=スマホ依存」と言っていいでしょう。

 スマホの長時間使用が子供たちの脳に重大な影響を与えていることを、専門家は指摘しています。例えば川島隆太・東北大学教授らが小中学生約7万人を対象に行った合同調査で、スマホの使用時間が長いと、勉強時間がいくら長くてもその分の学習内容が消えるという分析結果を示しています(『やってはいけない脳の習慣』青春新書)。

 他にも、睡眠不足や視力の低下、保護者とのコミュニケーション不足、運動不足による運動機能の未発達など深刻です。また、低年齢の子に使わせるスマホ育児も難しい問題です。「静かに遊んでくれる」「手を離れる時間ができる」というように、親にとってはありがたい半面、視力の低下や、それこそ依存症も心配になります。

 では、子供のスマホ依存に、家庭はどう対応したらいいのでしょうか。
 日本小児科医会は、親子が目を合わせて語りかけたり、使う時間をコントロールして親子の共有時間を奪われないようにと呼びかけています。
 また、日本で初めてネット依存の専門外来を開設した久里浜医療センターの樋口進院長は、ネット依存の子供たちがいる家庭に共通しているのは、「父性の欠如(または父性の不在)」だと指摘しています(『ネット依存症』PHP新書)。

 子育てを母親任せにしたり、母親の悩みを受け止めない、子供との対話も希薄など、父性が見えない家庭が多いというのです。子供が病院に行く時に休みを取って一緒に行ったりするという父親の姿勢を見るだけでも、子供の心は安定するそうです。父親が子供にしっかりとした、良い意味での影響力を持っていることが大切だというわけです。