2018.02.28 12:00
今、改めて問う、トランプを選んだアメリカの本質
トランプ勝利の根因、「反知性主義」とは何か
トランプを選んだ米国の本質
(2)アメリカ建国の背景と精神
ナビゲーター:木下 義昭
アメリカを建国したピューリタン(清教徒)たちの歴史を振り返ってみましょう。
1620年、英国国教会がカトリックから完全に離脱できないことに反発した清教徒(=ピューリタン:名称は「清潔」「潔白」などを表すPurityに由来)102人は、新天地を求めて母国イングランドのプリマス港をメイフラワー号で出港し、北アメリカの北東部にあるマサチューセッツの港に到着しました。1783年、イギリスはパリ条約によって正式にアメリカ合衆国の独立を承認しました。
彼らは、英国国教会を批判して新天地を開拓し、アメリカに土着化しました。神と人間が「双務契約(幸福の神義論)」、すなわち「正しい者ならば神の祝福を受ける」「神の祝福を受けているならば、正しい者だ」と考えました。ここにマックス・ヴェーバーの理論が適合したわけです。
初代大統領ワシントンは、国王の称号を薦められましたが、ワシントンは「これからは王様の時代ではない」と、王になることを拒否、選挙で国家元首を選ぶシステムを選んでいます。
アメリカの本質を深く知る上で、象徴的な「絵」があります。「明白なる天命(マニフェスト・デスティニー)」です。トランプ大統領が強調する「アメリカ・ファースト(米国第一)」の根底にあるアメリカの歴史的背景が理解できる絵です。
マニフェスト・デスティニー(Manifest Destiny)とは、元々はアメリカ合衆国の西部開拓を正当化する標語で、「明白なる天命」「明白なる使命」「明白なる運命」「明白なる大命」などと訳されます。絵の中央に描かれている天から遣わされた女神によって西へ西へと導かれます。東から西に横断する大陸鉄道も描かれています。
「文明は、古代ギリシア・ローマからイギリスへ移動し、そして大西洋を渡ってアメリカ大陸へと移り、さらに西に向かいアジア大陸へと地球を一周する」という、いわゆる「文明の西漸説」に基づいたアメリカ的文明観です。
アメリカでは、時々に大きなリバイバル運動が起こります。これが「反知性主義」です。独立して自由な国をつくろうと言ってアメリカをつくったのですが、ある程度時間が経つと、特権階級が生まれます。そのように社会が固定的になってくると、社会は発展しなくなります。そうなると、「本来のアメリカの建国の精神に立ち返ろう」ということで、リバイバル運動が活発になってくるのです。
このような大きな流れの延長線上に出てきたのが、「トランプ大統領誕生」だと私は見ています。(続く)