2018.02.27 12:00
今、改めて問う、トランプを選んだアメリカの本質
トランプ勝利の根因、「反知性主義」とは何か
トランプを選んだ米国の本質
(1)米国における反知性主義
ナビゲーター:木下 義昭
トランプ大統領は先月(2018年1月)、就任2年目を迎えました。オバマ前大統領の政策を次々に転換し、大胆な言動でも国内外を揺さぶりました。11月の中間選挙に向けて、2年目も「米国第一」を追求し、「より大きく、より良く、より強い米国の復活を世界に見せる!」と宣言しています。
就任前後、トランプ大統領に対する懸念や不安を、世界のマスコミは報じましたが、今回は、世界のマスコミ等が真相を解明できず、報道できなかった、あるいは報道しなかった点について、改めてお話しします。
「反知性主義」が、トランプを「勝たせた」といわれています。言葉だけ聞くと、「知性の無い人々の代表がトランプ」というイメージになりますが、これは大きな間違いです。それは、「反知性主義はアメリカの本質だ」ということです。トランプ勝利の背景にもこの流れがあったのです。反知性主義はアメリカの本質であり、歴史的に振り子のように現れ、その流れは顕在化するのです。
明確にすべきことは、「知能(インテリジェンス)」と「知性(インテレクト)」の区別です。
「知能」は物事を把握し、解決法を考え、実行する能力であり、「知性」はその上に、人間性や慎み深さなどを加えた力、すなわち、熟考し、吟味し、検証し、理論化し、批判する力を指します。
つまり、知性とは、知能が評価した結果を客観的に評価する力ということになります。
アメリカにおける「反知性主義」とは、知能を重視して、固定的で既存の知性に留まっている既得権益の政治リーダー、学者、科学者、マスコミなどを批判するものなのです。
さらに、アメリカの本質を見ていきましょう。アメリカはキリスト教国家、特にプロテスタントの国家であり、特有のキリスト教が土着化して全土に拡散しました。「富と成功」の福音が拡大した、ということです。
合理性によって世界全体を説明できないということは自明であり、理性によって全てを説明できるというエリート層に見られる知性主義(あるいは主知主義)には限界があるというのが反知性主義の立場です。
反知性主義には、重要な側面があります。それは、知性の限界を知り、それを「超克する」ということです。超克する可能性を秘めた存在として見られたのが、トランプ氏であり、彼は「富と成功の福音の体現者」と見られたわけです。超克は緊張感を生み、知性主義を刺激し、反省を生み出すことになります。
このように、時代の要請に応えて、らせん状に回転しながら上昇していくところにアメリカの強さがあります。(続く)