2020.05.04 22:00
スマホで立ち読み Vol.9
『地域化講座~地域づくりは国づくり~天一国時代の伝道論』(5)
入山聖基・著
「スマホで立ち読み」コーナー第9弾で取り上げるのは、『地域化講座~地域づくりは国づくり~天一国時代の伝道論』です。
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第一章 カインの祭物
すれ違った想い
神様はカインも愛していました。
復帰摂理における救いの対象は、アベルだけではありません。カインもその対象です。むしろ、条件的に一番神様から遠いカインが救われてこそ、救いの目的が成就するのです。
しかし、カインにはそれが分かりませんでした。
供え物を取られなかったとき、「カインは大いに憤って、顔を伏せた」(創世記四・5)という話を聞けば、カインが受けたショックのほどがうかがえます。カインもまた、アベルと同じように、神様に供え物をし、受け取られ、祝福され、認められたかったという強い気持ちを持っていたことを表しています。
確かに、サタンの血統となったアダム家庭の長子として、堕落の影響を受けやすい立場にあったカインは、悪人となる素養を持っていたかもしれません。血気怒気に走りやすい、粗暴な性格だったかもしれません。しかし、だからといって救われたくない、神様の祝福を受けたくないとは限りません。
カインもまた、自分の中の悪に苦しみながらも、救いを求めていたのです。その心の叫びを、誰が理解してあげるべきだったのでしょうか?
結果としてカインは、アベルに嫉妬し、殺してしまいました。神様に供え物を受け取ってもらえなかったことが、事件の発端になっています。
カインは、間違った思い込みをしました。供え物を顧みられない神様の「態度」を見て、自分は神様に嫌われていると思い、存在が否定されているかのように思ったのです。親から見捨てられた子供のような気持ちになりました。「自分は親から愛されていない」という思いは、絶望をつくりだし、「もうどうなってもいい」と、自暴自棄になりました。
そして人を殺す──。これがカインが殺人者となった動機です。
最近、日本の社会において、「だれでもよかった」という直接の怨恨関係なき、通り魔的な殺人事件がしばしば起こります。そうした事件の背景を見ると、親から見捨てられたと思うような家庭環境があることが多く見られます。皮肉なことですが、人は愛がなければ生きられないことを示しているのです。
彼らは世の中に腹を立てながら、自分という存在に腹を立てているのです。彼らは人を殺しながら、実は自分をも殺しているのです。自殺者の動機も、殺人者の裏返しで、同じ面があるように思えます。
自分は神様、親から愛されていない──カインはそう思っていたのです。
カインが抱いた思いが、現代社会においてもそのまま続いていることが分かります。偽りの愛に基づく思いが新たな生命を生んで、それが血統として後孫までつながっていくのです。
神様はカインを愛しています。悪人をも救おうとしています。しかし、カインは神様から愛されていないと思い込んでいます。想いがすれ違っているのです。これほど切ない話があるでしょうか?
「わたしは、それでもおまえを愛している」という神様のこころがカインのこころに届くとき、その恨みが解けていき、復帰が始まるのです。
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次回もお楽しみに!