夫婦愛を育む 107
誰かが不平を言ってきたら

ナビゲーター:橘 幸世

 皆さんは、目の前の人が不平不満を言い出したら、どう反応しますか?
 
 さほど親しい人でなかったり目上の人だったりしたら、おそらく黙って聞くでしょう。
 気の置けない人や家族が言ってきたら、不平不満は堕落性、良くないと思って「でも、~があって感謝じゃない?」「~なだけ有り難いわよ」などと言って、ポジティブな側面を挙げて感謝するよう諭すかもしれません。

 言われた側はどうでしょう? 素直に切り替える人、ムッとして黙る人、責められたように感じて内心傷つく人、「そんなこと言ったって」と反論する人、さまざまかと思います。

 昨年本欄で紹介した『少女ポリアンナ』の著者エレナ・ポーターによる『スウ姉さん』という本に出合いました(一般向けの小説です)。

 父の銀行が破綻し、豊かな都会生活から一転、主人公のスウは田舎での困難な生活を強いられます。父は破産のショックで認知症になり、母は既に他界、弟妹は環境が変わってもわがまま放題は変わりません。家族を守ろうと孤軍奮闘するスウは、家政婦が逃げ出した家で初めての家事に臨みます。

 そんな姉の苦労を思いやることなく、「こんなものは食べられない」とかんしゃくを起こす弟妹(読んでいて腹が立ちます)。スウ姉さんは一生懸命なだめようと「そりゃあ、パイはうまく焼けなかったけど、ジャガイモをグレービーソースでおいしく食べられるだけ有り難いじゃない」と言いますが、不満はさらにヒートアップ。「姉さんはどんな嫌な事でも“ありがたい”“ありがたい”でにこにこしていらっしゃるけど、あたしはそれが気にくわないわ」

 いたたまれなくなったスウは、隣の老婦人を訪ねて、胸の内を吐き出します。状況を察した老婦人のアドバイスは、「あなたも一緒になって愚痴を並べ立ててごらんなさいまし」でした。「姉さんの思いやりを欲しがっているのに、お手本ばかり見せて、思いやりを見せないから駄々をこね出すんですよ」

 目からウロコのスウは、妹や弟が不平を言いかけたら、すぐにそれに共鳴して彼ら以上に愚痴をこぼしました。時には妹が耳を抑えて逃げ出すほどに。そんなことが繰り返されるうちに、姉が自分たちに同情してくれたのだと悟った弟妹は、やがて口まで出かけた不平をのみ込むようになったのでした(スウが愚痴をこぼしたのはこの10日ほどだけです)。

 もう10年以上前になりますが、私は病気治療の最中、町でばったり会った知人からとんでもない言葉をかけられました。

 その場はクールに答えた私ですが、その情の欠如にがくぜんとしました。
 家を訪ねてくれた友人にそのことを話すと、彼女は知人の言葉にとても憤慨しました。彼女が私の代わりに、私以上に怒ってくれたことで、私はとても慰められたのです。

 もちろん、負の授受作用にならないよう留意しなければなりませんが、受け止め共感することは、不平不満を聞く時にも大切なポイントのようです。