2020.02.26 17:00
歴史と世界の中の日本人
第31回 黒澤明
映画を通して「日本」を世界に発信したクロサワ
「世界のクロサワ」といえば、言うまでもなく、日本映画界を代表する黒澤明監督(1910~1998)のことである。
米国のサイトWatchMojoによれば、海外の映画ファンが選んだ黒澤作品のベストテンは、10位から『影武者』(カンヌ映画祭グランプリ)『天国と地獄』『椿三十郎』『生きる』(ベルリン国際映画祭ベルリン市政府特別賞)『蜘蛛巣城』『隠し砦の三悪人』(ベルリン国際映画祭監督賞)『用心棒』『乱』(英国アカデミー賞外国語映画賞)『羅生門』(ベネチア国際映画祭金獅子賞、米アカデミー賞名誉賞)『七人の侍』(ベネチア国際映画祭銀獅子賞)だという。
スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラなどの映画人にも大きな影響を与えていることはよく知られている。
「クロサワは私の人生の師であっただけでなく、私たちの世代にとって父と仰ぐ存在でした。クロサワの作品から受けた恩恵と影響は計り知れません」(スピルバーグ監督)、「クロサワは自分の映画人生の原点だ」(クリント・イーストウッド監督)
イーストウッドはカンヌ映画祭の会場で「ミスター・クロサワ。あなたなしでは今日の私はなかった」と黒澤の頬にキスをしたという。
前述の『羅生門』(1950年公開)『生きる』(1952年公開)『七人の侍』(1954年公開)『隠し砦の三悪人』(1958年公開)が制作された1950年代は、敗戦で焼け野原となった日本がようやく立ち上がろうとしていた復興期である。
欧米の映画人たちが、文化的に劣ると見下していた日本の映画作品を、差別や偏見を超えてこれだけ評価し、表彰したことは驚くべきことである。
クロサワが映画を通して「日本」を世界に発信した功績を忘れてはならない。
洋の東西を問わず愛されたクロサワ作品。
スピルバーグは言う。
「クロサワはフィルムを使った画家であり、現代における映画のシェークスピアだった」
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次回は、「欧米の学者たちを刺激した植物学の巨星」をお届けします。