夫婦愛を育む 103
過酷な環境で甘くなる野菜たち

ナビゲーター:橘 幸世

 先日テレビで、イチゴと同レベルの糖度を持ったニンジンを紹介していました。地元の人に大人気で、皆大量に買っていきます。子供たちもそのニンジン、大好きです。

 甘さの秘密は、これでもかというほどにニンジンに与えるストレス。畑は砂地のため水はけがよく、ニンジンにとっては水不足になります。さらに畝(うね)を高くして、水を一層得難くします。

 そんな過酷な環境でも生き延びようとするニンジンは、自体の中で糖をたくさん作るそうです。結果、とても甘いニンジンになるのです。

 似たようなことは以前にも聞いたことがありました。
 寒い地方で、収穫後のキャベツを雪の下に埋め込んでおくというものでした。氷点下で生き延びようと、キャベツが糖分を増やして凍らないようにするので甘くなるといいます。

 ストレスのかけ方は違いますが、甘くなるのは同じです。他にもあるかもしれないとネットで検索してみると、過酷な環境で甘くなる野菜は雪下野菜あるいは雪中野菜と呼ばれるキャベツやニンジン・大根にとどまりません(それらは、光合成で作ったデンプンを体の中に蓄えていて、それを酵素の働きで糖に変えるそうです)。
 ピーマンやトマトも、あえて与える水分量を抑えて甘くしている農家さんがありました。白菜やホウレンソウは、冬場の寒さが厳しくなってからのものの方が甘くておいしいそうです。

 野菜たちは、厳しい環境の中でおいしくなる。
 では、人間も同じ、もしくはそれ以上であるはずです。苦労や試練を乗り越えてこそ、人は成長し、他者の痛みが分かるようになり、寛容になれます。柔らかく、味わい深い人となるでしょう。

 では、甘くなる野菜たちのように、私たちが厳しい環境を生き抜いて、より愛ある人間になるための“糖”は何だろうかと考えました。
 自分が持っている“デンプン”を“糖”に変えないと、枯れたり凍ったりしてしまいます。苦労によって、いじけたり人間不信になったり気力を失ったりするのです。

 “糖”は、それまでに受けてきたさまざまな愛や親切、楽しい思い出、自分を生かしてきてくれた全ての要素を思い起こして、愛されている自分であることを再確認し、感謝することかもしれません。

 苦しい中にあればこそ、他者の中の真の優しさに気付けること。今の苦労が一時的なものであり、必ず光が射すことを信じ、希望を持つこと。天の父母様が共にあることを確信すること。そんなふうに考えていたら、イエス様がいつまでも続くと言われた「信仰と希望と愛」(コリント人への第1の手紙 第13章13節)に思い至りました。


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