コラム・週刊Blessed Life 97
慈善活動に全力投入するビル・ゲイツ

新海 一朗(コラムニスト)

 ビジネスで成功を収めた人物は、その後もずっとビジネス畑で活躍を継続させるのでしょうか。もちろん、そういう人もいるでしょう。しかし、ビル・ゲイツの場合、少し違います。

 ビル・ゲイツは、Microsoft社のCEO(最高経営責任者)を20001月にスティーブ・パルマに譲ります。そして、2008年には、Microsoft社の日常業務から一切身を引き、慈善活動の方へ比重を移していきます。

 ビル・ゲイツと彼の妻メリンダは、2000年に世界最大の慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を創設しました。
 2006年には、ウォーレン・バフェットからの300億ドルに上る寄付により、財団の規模が大きく膨らみます。世界における病気や貧困をなくしていくという偉大な挑戦が始まったのです。
 米国においては、主に、教育の機会およびIT(情報技術)に触れる機会の提供を中心として活動を行っています。

 「全ての生命の価値は等しい」という信念のもとに、創設以来、ゲイツ財団は全ての人々が健康で豊かな生活を送ることができるように支援を実施してきています。
 三つのプログラム、すなわち、国際開発プログラム、グローバルヘルスプログラム、米国プログラムを推し進める形で、慈善活動に取り組んでいますが、それらは非常に真剣なものであり、お金持ちの道楽的な慈善とは次元を異にするものです。

 ハーバード大学のウィリアム・カー教授によれば、「ゲイツは後半生のキャリアをフルタイムでフィランソロピー(慈善、博愛)に費やしている。他のビリオネアを牽引(けんいん)し、先頭に立って、社会貢献への賛同を呼び掛けている」と評価しています。

 ビル・ゲイツが慈善事業家として「本物」である理由は、世界をより良くするために自ら動き、悲惨な現実を把握してそれに対処し、解決の道を求めて実際に行動していることに現れています。

ビル・ゲイツ夫妻(ウィキペディアより)

 IT帝国を築き上げたカリスマからフィランソロピーのカリスマリーダーへと変貌を遂げたビル・ゲイツは、その歩むべき自らの人生の道筋を、社会的起業家精神に溢れた慈善活動家としての使命に置き、Microsoft時代以上の熱意をもって活動しています。

 ニューヨークの起業家、ラッセル・サーダーは、「ゲイツは、強いリーダーになるための『VISTA』なるフレイムワークを全て備えている」と言い、それらのVVisionary=先見性)、IInspiring=人の心を動かす)、SSmart=聡明さ)、TTrustworthy=信頼に値する)、AAble=物事を遂行する能力・有能さ)、といった資質が十全であり、遺憾なく発揮されていることをたたえています。

 ビル・ゲイツがIT帝国をどのように築いたかを描いた『Gates』(1993年)の共著者であるスティブン・マーネスは、一年がかりでゲイツへの取材を行いました。
 彼によれば、第一に、ゲイツは社内の誰よりもよく働いたこと、第二に、非常に柔軟性に富んでいること、第三に、データを重視する緻密な討議事項をもとに会議を行うこと、などの特徴を見ました。
 ビル・ゲイツは、今、それらの特徴を全てフィランソロピーの分野で実施しているだろうと、マーネスは語っています。何兆円もの資産を持つビル・ゲイツはその資産を病気と貧困を根絶すべく、敢然と、挑戦しているのです。