信仰と「哲学」37
本体論入門~特別編② 芸術的感動と清平役事

神保 房雄

 「信仰と『哲学』」は、神保房雄という一人の男性が信仰を通じて「悩みの哲学」から「希望の哲学」へとたどる、人生の道のりを証しするお話です。同連載は、隔週、月曜日配信予定です。

 神との共鳴・共振についての清平役事「経験」を述べる前に、どうしても紹介しておきたい出来事があります。

 それは、昨年(2018年)131日、東京の紀尾井ホールで行われた、iPS細胞研究所の山中伸弥教授のトークとバイオリニストのレイ・チェン氏のリサイタルでの出来事です。

 その時の感動について記してみます。

 レイ・チェン氏(30歳)は台湾出身のオーストラリア人バイオリニストです。その時の演奏はストラディバリウスを使用していました。

写真はイメージです

 山中氏のトークの後にレイ・チェン氏の演奏が続きました。
 モーツアルトの楽曲が演奏されたのですが、レイ・チェン氏を事前に知っていたわけではありませんでした。

 最初の12曲の時には何事もなく、単に「うまいな」程度の受け止めでした。ところが最後の一曲、曲名は覚えていないのですが、私は全身全霊が震えるような感動を覚えました。自然に涙が溢れ、新しい力が自然に湧いて来るのを感じ、「何だろう、これは」との思い、「純粋経験」で全てが満たされたのです。新しい生命が投入された感覚を受けました。

 人間が他の人に感動を与え、新たな「生命」を投入すること、その人の思考や生活までも変えてしまうことが可能であることを改めて実感したひとときでした。

 その時のレイ・チェン氏には、観客に「感動を与えよう」「自分を高く評価してもらおう」「これをきっかけに自分を取り巻く環境を変えてしまおう」などという考えはなかったと思います。あったのは熟練された技術を基礎に、楽曲と完全に一つになることだけだったと思うのです。

 そこにあったのは確かな「四位基台」=統一体でした。
 レイ・チェン氏と楽曲、そしてストラディバリウスが一体となっていたのです。それが私の中に内在する本質的四位基台を呼び起こし、共鳴・共振を起こしたのです。
 四位基台=統一体を実現する唯一の力は愛です。与え続ける、与えて忘れる真の愛のみなのです。

 統一体とは有機体であり、生命体でもあります。一つになることによって全身全霊が振動し、感動と新しい生命力を引き出すのです。
 清平役事にはその意義、力がありました。