青少年事情と教育を考える 93
読解力が身に付かない子供たち

ナビゲーター:中田 孝誠

 先日、経済協力開発機構(OECD)が実施する「国際学習到達度調査」(PISA)の結果が公表されました。

 この調査は3年に1度、日本では高校1年生に当たる15歳の子供たちを対象に行われます。今回公表されたのは2018年に行われたもので、世界79カ国・地域の約60万人、日本は約6100人が参加しました。

 この中で、日本の子供たちは「数学的応用力」(6位)と「科学的応用力」(5位)は世界のトップレベルにあるのに対して、「読解力」(15位)が大きく低下したことが大きく報道されました。前々回(2012年)、前回(2016年)と比べると、得点(538→516→504点)、順位(4→8→15位)ともに大きく低下しています。

 例えば、雑誌やブログなどの記事を読み込んで必要な情報を探したり、自分の考えを他の人に根拠を示して伝えたりする問題などで、低い得点にとどまりました。

 読解力を身に付けるために重要なのは読書ですが、今回も幅広い分野の本を読んでいる子供ほど得点が高いという結果が出ています。

 もう一つ、今回の調査で興味深かったのは、「学校外でのインターネットの利用時間」です。

 OECD加盟国のネットの平均利用時間は、平日が「24時間」、休日は「6時間以上」です。日本は平日も休日も「24時間」が最も高くなっています。

 ただ、学校外で勉強する時に利用しているか(「毎日」「ほぼ毎日」の合計)については、例えば、「勉強のためにインターネットを見る(調べる)」はOECD平均が平均23.1%だったのに対して、日本は6.0%でした。「コンピュータを使って宿題をする」はOECD平均が22.2%、日本は3.0%でした。

 逆に「チャットをする」はOECD平均67.2%、日本87.3%、「1人用のゲーム」はOECD平均26.7%、日本47.7%でした。チャットなどの短いコミュニケーションが増えると、長い文章の理解力がますます身に付かなくなるのではないかと考えられます。スマートフォンなどの利用時間は増えていますが、少なくとも読解力が身に付くような使い方ではないというわけです。

 最近、教科書などを読めない(理解できない)子供たちの増加が指摘されています。今回はそうした心配を裏付けるような結果となっています。