世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

香港区議選で民主派圧勝も、闘いは続く

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、11月25日から12月1日までを振り返ります。

 この間以下のような出来事がありました。
 香港区議選、民主派が8割以上の議席獲得、抗議活動継続明言(25日)。沖縄・首里城再建、国営事業で取り組むと政府発表(25日)。香港人権民主法成立、トランプ大統領署名(27日)。中曽根康弘元首相、死去(29日)。北朝鮮、GSOMIA(軍事情報に関する包括的保全協定)維持を「民族的犯罪」と批判(29日)、などです。

 今回は、香港問題を取り上げます。
 6月以降の民主派デモが続く中、注目の区議選が11月24日実施されました。区議選は一人一票の直接選挙です。区割りは元々、親中派に有利なものになっているのですが、結果は、全452議席中、8割を超える385議席を民主派が獲得し、親中派は59議席にとどまりました。その他が8議席です。親中派の組織力や資金力をもってしてもその流れを止めることはできなかったのです。

 前回、2015年の区議選結果を見ると、計431議席(当時)のうち親中派が298議席(7割)を獲得。民主派114、その他19議席でした。そして投票率を見ると、15年は47.1%、今回は71.23%となりました。
 しかし、区議会の権限は限定的なものであり、立法権や予算決定権はないのです。公共サービスや福祉といった地域の問題について、政府に提言する諮問機関のような位置付けになっています。全18区に設けられた議会で、議員の任期は4年です。区議会全479議席のうち、452議席が一人一票の直接選挙(小選挙区)で選出されるのです。

 今後、多くの権限を持つ立法会選挙や行政長官選挙が来年以降に控えています。それぞれ制度が異なるので今回の民主派の勢いがそのまま反映されるわけではありません。香港で議会(日本の国会など)に当たるのは立法会で、来年選挙です。さらに2022年には行政長官選挙があります。

 立法会の定数は70議席。直接選挙で選ぶのはそのうち35議席のみ。その仕組みは親中派に有利になっています。行政長官選挙(2022年)はさらに親中派に有利な仕組みになっています。職業別団体代表や立法会議員らで構成される選挙委員会(定数1200)の間接投票で選出されるのですが、これまで投票資格を持つ選挙委員(1200人)のほとんどは親中派です。そのうち117人は区議の互選で選ばれることになっており、その全てを民主派が占めるでしょう。それでも大勢を占めることは不可能なのです。

 今後の中国の対応が注目されます。親中派の敗北は予想されていましたが、ここまでの惨敗は想定外でした。香港問題は台湾問題につながります。台湾の総統選挙は来年1月です。

 巨大中国が大きく揺れ動いています。