2019.09.30 17:00
コラム・週刊Blessed Life 86
「人類よ、神に帰れ」
新海 一朗(コラムニスト)
「なにごとのおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」(どなたさまがいらっしゃるのかよくは分かりませんが、畏れ多くてありがたくて、ただただ涙が溢れ出て止まりません)と歌った西行(1118~1190)は、宇宙の本体をおぼろげに感じ取っていました。
古来より、多くの義人・聖人たちが、宇宙本体からの声を「内なる声」として聞き取ってきました。争い殺し合う世の無常をむなしく感じ、出家した西行に、神は語り掛けてくださり、西行はそれをおぼろげに感じ取ったのです。
西行に語り掛けた神は、それ以前のずっと昔、モーセに現れ、ご自身を「わたしは有って有る者」(旧約聖書、出エジプト記 第3章14節)とモーセに語り掛けました。
何とも不思議な自己紹介の言葉ですが、King James Versionの英訳では「I AM THAT I AM」となっています。
さらにヘブライ語を見ますと、「エフイェ アシェル エフイェ」という言葉です。
シナイ山の燃える柴の中から、神はご自身を「有って有る者」と語られましたが、その意味は「わたしは有る(存在する)。そういう者だ」となり、これは、何者にも存在させられることなく、自ら存在する絶対自存者であることの宣言です。すなわち、神の原因はなく、究極の実在であるということ、まさに、神が究極原因であるという絶対的宣言です。
現代科学において、宇宙の始まりは「ビッグバン」という出来事から説明されます。
エドウィン・ハッブル(1889~1953)は、宇宙がどの方角にも膨張しているという事実を観測しました。そこから、時間を戻していくと宇宙は超高温度、超高密度の極小の塊になるという推測が生まれ、ジョージ・ガモフ(1904~1968)はそれを「火の玉宇宙」と称しました。
そして、宇宙の種のようなものが今から138億年前に大爆発(BIG BANG)を起こしたという考えが生まれ、それがいろいろな側面から立証され、「BIG BANG理論」がほぼ定説として科学者たちに受け入れられることになったということです。
ビッグバン理論のポイントは、宇宙は昔からそのままの姿でそこにあったのではなく、始まりがあったということです。
宇宙はあったのではなく、始まりがあった、言い換えれば、ビッグバン以前には、宇宙も何もなかったということになります。こうなると、ビッグバンの原因は何か、ビッグバンを起こした(誘導した)何かがあるということが問題になってきます。
ビッグバンの向こうに「第一原因」「究極実在」としての神の存在がなければならないという論理が不可避的になるわけです。
現在、地球は争い、もめ事で満ちており、秩序を失い、人々は憎み合い、愛し合うことを知りません。しかし、神の存在から始まった宇宙の創成史は、見事な自然法則に従った宇宙と自然の姿を私たちに教示しています。
ここにおいて、「人類よ、神に帰れ」という警鐘を打ち鳴らすとすれば、それは、宇宙森羅万象が示す愛の秩序を学びなさいということです。
万物以下に堕ちた人間が学ぶべきは、神の英知が結集している自然界の英知から学ぶことです。