夫婦愛を育む 84
「それは○○さんを見れば分かるよ」

ナビゲーター:橘 幸世

 昨今、夫の実家に帰省するのが憂鬱(ゆううつ)だという妻たちの思いが取り上げられています。
 理由はさまざまで、お姑(しゅうとめ)さんから陰に陽に来るプレッシャーだったり、特定の子供や孫への偏愛、義理の姉妹との比較、子供の躾(しつけ)への苦言、さらには実家での夫の態度だったりするようです。

 義理の両親・兄弟姉妹の性格や態度は一朝一夕では変わりませんので、帰省の際お嫁さんたちの精神的負担が幾分軽くなるか否かは、やはりご主人の態度によるところが大きいかと思います。

 大前提として、彼女だけが他家からの人間ですから、夫はその辺りを察してあげる必要があります。そして上手に間に入りながら、妻の味方でいましょう(自分の親とけんかしろと言っているわけではありません。あくまで基本姿勢です)。それだけで、彼女の気持ちはずっと楽になるでしょう。間違っても、妻を放っておいて自分だけくつろがないようにしましょう。

 逆もまた然りで、妻の実家に家族で帰省する時、妻は夫が居心地がいいように気配りすることが大切です。
 自分を大切に思い味方でいてくれるパートナーの親ならば、大切にしたいと思うのが自然な情の流れかと思います。

 私の周りにも夫の親と同居している友人は少なくなく、そんな彼女たちとお茶をしているといろいろな話を聞きます。

 Sさん夫婦は年に一度、子供を連れて奥さんの実家を訪れているそうです。

 Sさんのご主人はマメな人で、訪問中はよく動き、時には修理まで買って出たこともあるとのこと。奥さんの両親やお兄さんとも上手に会話してくれるので楽しく過ごせ、帰省は双方が楽しみにしている恒例行事となっています。

 遠方に嫁ぎ、義理の親と同居し、周りにご主人側の親戚も多い所でやっているSさんのことを、実家の皆は少なからず心配していたようでした。

 ある時彼女が話の流れの中で「あちらのお母さんは本当にいい人なの」と(もちろん自然体で心から)言いました。それに対して、彼女のお兄さんから「それは○○さん(Sさんのご主人)を見れば分かるよ」という言葉が返ってきました。

 あまりそういった類いの事を言わないお兄さんなので、彼女は内心とても驚いたそうです。そして、ご主人が積み重ねてきた小さな真心がちゃんと認められていることをとてもうれしく思うと同時に、ご主人のことを改めて「偉い人だな」と思ったといいます。

 時には、正直「他人の家に入ったことのない人にはこの気持ち分かるはずもない」と思うこともあるそうですが、それは仕方のないことなので、ご主人と一緒に親孝行していこうと思っている、と結んでいました。