青少年事情と教育を考える 78
今、英語教育は転換点

ナビゲーター:中田 孝誠

 文部科学省が毎年実施している全国学力・学習状況調査で、今年4月に中学校で初めて英語が出題されました。「聞くこと」「読むこと」「書くこと」「話すこと」の4技能を見る試験で、対象は中学3年生です。

 7月末に公表された結果によると、「聞くこと」(平均正答率68.3%)、「読むこと」(同56.2%)、「書くこと」(同46.4%)に対して、「話すこと」(同30.8%)の正答率が大きく低下していました(「話すこと」は各学校のコンピューターを利用して生徒の音声を録音する方式だったため、それぞれの情報通信環境によって調査が難しい学校もありました)。

 国語(同73.2%)、数学(60.3%)と比較しても、特に「話すこと」が苦手な生徒が多いことが分かります。

 英語教育は今、大きな転換点にあると言えます。

 小学校では、これまで外国語活動として英語が取り入れられていましたが、2020年度からは学年が下がり、小学3年生から外国語活動として必修に、5年生からは教科になります。
 教科では教科書ができ、成績がつきますから、英語に親しむ段階から、本格的に学ぶ段階になるわけです。

 一方で、英語の指導法を学んだ小学校の教員は少ないため、国は学級担任への研修体制の整備を進めたり、英語専門教員を配置したりすることにしています。

 また、大学では現在のセンター試験に代わり、2021年から新しく大学入学共通テストが始まりますが、英語では民間試験を活用する方針です。ただ、先日、TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)が試験活用から参加を取り下げると発表しました。
 参加団体の試験に関する詳細が必ずしも明確でなく、高校の現場が混乱しているともいわれています。

 グローバル化、国際化といった言葉が先行していますが、何のための英語教育なのか、特に小学校教育では明確にしていく必要があるでしょう。

 「英語を話せる」というより、「英語で何を話すかが重要」とよくいわれます。英語と同時に文化や教養教育を大切にしたいところです。