世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

「徴用工」判決に対する日本の対抗措置とは

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、7月29日から8月4日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 中国、台湾への個人旅行中止(31日)。臨時国会開会、天皇陛下が初のお言葉(8月1日)。トランプ大統領、対中制裁関税第4弾9月1日発令を公表(1日)。北、短距離弾道ミサイルを2発発射(2日)。「ホワイト国」から韓国を除外、閣議決定(2日)、などです。

 日本の対韓輸出管理強化について説明します。
 日本政府は8月2日、韓国をホワイト国(輸出管理優遇措置対象国)リストから外す政令改正を閣議決定しました。7月1日に通産省が発表した方針の中に明記されており、関係者の間では織り込み済みではあったものの、やはり衝撃でした。施行は28日です。

 撤回を求めていた韓国政府は強く反発し、日本に対する対抗措置を取ると表明。日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄の可能性についても触れています。

 韓国が日本のホワイト国リストに入ったのは2004年。今回の措置は2003年までの輸出管理の在り方に戻るというものです。禁輸措置ではありません。中国や台湾、インドやインドネシアなど、皆ホワイト国ではないのです。

 世耕弘成・経済産業相は閣議後の会見で、「手続きや管理がしっかりしていれば輸出できる」「米国にも詳しく説明している」と強調しました。

 韓国は2日午後、臨時閣僚会議を開きました。文在寅大統領は日本の措置は韓国人元徴用工訴訟の判決を巡る「明白な経済報復だ」と述べ、「とても無謀な決定で、深い憂慮を表明する」と非難しました。

 日本政府の今回の措置の原因は、経産省の担当部局で数年前から韓国に対する不満が高まっていたことが原因です。軍事転用可能な材料の大量注文が来る。しかし、どこでどのように使われるのか不透明。このような「不適切な事案」があっても日韓の当局間対話は3年間も開かれていない。原因は韓国側が拒否してきたためです。

 今後このような事態を解消できるのかを考えたとき、日本政府は、慰安婦合意や大法院による元徴用工判決を巡る韓国側の態度から見て、信頼関係を築くのは困難と判断したのです。
 安倍首相が今回の措置に関連して徴用工問題に触れたとしても、両国の信頼関係について述べているのであって、その対抗措置として決断したということではないのです。

 徴用工判決に対する日本側の対抗措置は、8月中ともいわれる日本製鉄の在韓資産売却が行われるときです。その点は幾度も関係閣僚が国会で述べています。本当の対抗措置はその時に行使されることになるでしょう。

 まだ「トンネル」は続くことになりそうです。