夫婦愛を育む 61
一生懸命生きている人を神様は放っておかれない

ナビゲーター:橘 幸世

 若者支援センターにボランティアで出掛けた際、本棚に『わが家の母はビョーキです 2』を見つけました。

 統合失調症の母親との半生を描いた自伝漫画『わが家の母はビョーキです』を一気読みして感動したのは数年前。続編が出ていたのを知りませんでした。
 センターのスタッフさんの「借りていっていいですよ」との言葉を受け、自宅に持ち帰り再び一気読み。

 簡単に紹介しますと、著者が4歳の時、母親が統合失調症を発症します。父親が出て行った後の、母親との二人暮らしは想像を絶するものでした。
 4歳児に病気の知識があるはずもなく、頼れる人もいません。時に妄想から暴れる母が自他を傷つけないようにと包丁を隠す、不安と緊張の日々。経済的にも困窮します。

 幾多の修羅場を通過しながらも、母親が幼い自分を抱いて「お前が生まれた時が、母さんは一番幸せだった」と言った時の思い出がよりどころになって、耐えていきます。

 社会人となり、生涯母と二人で生きていくと思っていた彼女の前に、なんと病気の母親ごと受け止めてくれる男性が現れ、結婚。三人での暮らしが始まります。彼の出現によって、母親の症状がより安定し、母娘に幸せが訪れました。

 この出会いが奇跡でなくて何でしょう。まさに神様からのプレゼントです! 一生懸命生きている人を神様は決して放っておかれない、と深く感動しました。

 母親の発病から25年して初めて、統合失調症が脳の病気だと知った著者は、正しい知識に基づいた対応の仕方を学び、夫や支援センターの人たちに支えられながら、少しずつ穏やかな生活を築いていきます。

 今回読んだ続編は、彼が加わっての三人の生活を描いていますが、特に印象に残ったのが、授受作用の原則です。
 私は講座で、金子みすずさんの詩「こだま」を引用してお話ししていますが、統合失調症の患者さんとケアする側(援助者)との関わりにおいても、その原則が如実に表れるということでした。

 この病気は症状が治まって安定したとしても突然再発することがあるのですが、援助者が、批判・敵意・心配のしすぎなどの負の感情が高い状態で接するほど、患者も負の感情で反応し、再発率が高いそうです。

 著者の感情の波が安定すると、母親の表情も明るくなり、体調も安定します。「イライラもうつるけど、ニコニコもうつるらしい」と、書いています。

 「至適な薬物+患者中心のストレスマネージメント」よりも「至適な薬物+援助者中心のストレスマネージメント」の方が再発率が約3分の1というデータがあります。

 やはりどんな場合も、創造本性を中心とした授受作用、善い思いから発する関わりが、幸せな関係をもたらすのですね。
 そのためには、自身の思いも優しくケアしていきましょう。