「幸せな結婚」を考える 59

第11章 結婚と純潔

⑦真実の愛を得るために

ナビゲーター:長岡 高史

 この世界で男女の愛ほど素晴らしいものはありません。
 一方で、男女の愛によって不幸に落ちてしまう人たちもいます。世の中の殺人事件の多くの理由が「痴情のもつれ」です。

 一度は愛を交わした二人であるにもかかわらず、殺し合うほどまで憎んでしまうという悲劇は今も昔も変わることなく続いています。素晴らしいはずの「愛」から、なぜ不幸が生まれるのでしょうか。

 ロシアの作家・トルストイは「愛は惜しみなく与える」と言い、一方で、日本の作家・有島武郎は「愛は惜しみなく奪う」と言いました。
 矛盾する二つの表現ですが、どちらも「愛」というものをよく表しています。

 「与える愛」は成熟した人格があって初めて可能です。しかし、未成熟な人格で愛の世界に足を踏み入れると、それは途端に「奪う愛」へと形を変えます。愛は素晴らしいものでありながら、時を間違えると自らを苦しめ、さらには周りまでも不幸にするという「二面性」を持っているのです。

 ドイツの心理学者、エーリッヒフロムは言いました。
 「誰かを愛するというのは単なる激しい感情などではない。それは決意であり、決断であり、約束なのだ」と。愛の喜びを得るためには、相手を幸せにするという「覚悟」が必要なのです。
 性の知識を教えるならば、合わせて、愛の責任、愛する覚悟を教えなければならないのです。

 愛によって真の幸福を得るためには、成熟した人格が何よりも必要です。青少年期は愛の刺激を求めるよりも、人格を成熟させることが必要であり、そのような土台で出会った男女のみが愛の本当の喜びを感じることができるのです。