青少年事情と教育を考える 56
「大人になること」が難しい時代

ナビゲーター:中田 孝誠

 先日、内閣府が昨年12月に行った「成年年齢の引下げに関する世論調査」の結果が公表されました。
 この中で1622歳の若者の回答は次のとおりです。

 ①「成人になる年齢が20歳から18歳に引き下げられる」ことを知っているのは87%(引き下げられるのは2022年4月1日から)、「成人になると親の同意がなくても様々な契約ができる」ことを知っているのは57%、「親権に服さなくても(父母に従わなくても)進学や就職を自分で決められる」ことを知っているのは44%。

 この割合を高いと見るか低いと見るかは人それぞれでしょうが、同じ調査では今後契約トラブルが増えることを心配する声が多く、6割以上の人が消費者教育の充実を求めています。

 こうした問題はもちろん重要です。ただ、これも含めて、何より「大人になる」という自覚が大切であることは言うまでもないでしょう。

 有名な精神分析学者で文化庁長官も務めた河合隼雄氏が『大人になることのむずかしさ』(岩波書店)の中で、「現代社会では、大人と子供の境目がわからなくなっている」と述べています。元は1983年に書かれたものですが、現在にもつながるところがあります。

 河合氏が「大人になること」が難しいと言うのは、社会で通過儀礼(イニシエーション)がなくなってきたからです。
 例えば成人式。河合氏はかつての未開社会の例を紹介していますが、今の形とは違い、もともと成人式には宗教的な意味合いが込められていたというのです。

 河合氏は、大人になるためには「己を超える存在を認識すること」と「自分の拠り所となる世界観を持つ」ことが必要だと述べています。
 つまり現代日本は宗教が必要とされている時代だと言ってもいいでしょう。