2019.03.15 22:00
愛の知恵袋 56
しつけ上手なお母さんに
松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)
甘やかしすぎたお兄ちゃん
あるお母さんから相談がありました。「うちの子は、もう中学生になったのに甘えん坊で困ります」と言います。「毎日の生活はどんな様子なんですか」と聞いてみますと、「おはようと言っても、返事も満足にできないし、部屋の片付けは全くできないし、朝も私が起こしてやらないと起きられないんですよ…。下の子は小四ですが、お兄ちゃんがそんな状態なので、そのまま影響を受けそうで心配です」
「お子さん達のことについて、ご主人とは話し合ってみましたか?」
「ええ、夫に話したら、『そんなだらしないことじゃ、大人になったら社会では通用しないんだぞ!』と言って怒られたんですが、結局、『小さい時にきちんとしつけができていなかったということだね…』と二人で反省しました」
厳しく叱ってみたが…
「その後は、どうされたんですか?」
「はい、それで、『よし、これからはもっとちゃんとやらせよう』ということになって、夫も私も、日常の生活面で厳しく叱ることにしたんです。しかし、上の子は口をきかなくなるし、弟のほうも反発するばかりで、どうもうまくいきません。“しつけ教育”というのは、どのようにしたらいいんでしょうか?」
同じような相談を受けることはよくあります。幼少時にしつけをしておかないといけない…ということは分かるのですが、「具体的に、何を、どのように教えたらよいのか、よく分からない」という悩みにぶつかるのです。
先生泣かせの子どもたち
子供が一人前の社会人に成長するまでに受ける教育は、「家庭教育」「学校教育」「社会教育」という三つの要素がありますが、最も基本的な教育としての“しつけ”は、やはり、「家庭教育においてしかできない」と言えます。学校教育というのは、知識の伝授が中心であり、よほどの教育熱心な教師に恵まれない限り、人格教育としてのしつけまでを学校に期待するのは無理があります。もっと言えば、学校というところは、本来、家庭での“しつけ教育”を土台とした上で行くべきところなのです。
ところが、最近は、家庭において“しつけ”がされないままに入学してくる子が多いので、学校では授業中に、隣同士でしゃべったり、いたずらして喧嘩したり、勝手にトイレに行ったり、掃除や給食当番を忌避したり…といった行動がおこり、教師が授業に集中できないというような事態も起きています。いわゆる「学級崩壊」現象です。
“しつけ”の三ヶ条
“しつけ”は幼少時、遅くとも小学生のうちに、家庭できちんと身につけさせることが最善です。
では、何を、どのように教えたらよいのでしょうか。箸(はし)や鉛筆の持ち方をきちんと教えるということは大前提のことですが、基本的な「しつけの三ヶ条」というものがあります。
1. 朝、親に挨拶をすること。
2. 親に呼ばれたら、「はい」と返事をすること。
3. 履物を脱いだらきちんとそろえ、席を立ったらイスを入れること。
“しつけ”は、最低この三つのことがきちんとできるようにすればよいというのです。
第一の「挨拶」と第二の「返事」ができるようにするというのは“我”がとれるようにするためです。人は“我”の抜けていないうちは、自分から挨拶することも、素直に返事をすることもできません。これらが素直にできるようになれば、大人になっても人間関係をうまくやっていけます。
また、第三の「靴を脱いだらきちんとそろえ、席を立つときはイスを入れる」…これは美しい身だしなみであり、物を大切に扱う心でもあります。さらに、自分のしたことに責任をとるということであり、けじめをつけるということであり、周囲の人達のことを考えて行動するということでもあります。
母親がやって見せながら、優しく教える
“躾(しつけ)”とは、「身を美しく」と書き、礼儀作法を身につけさせることです。このような“身だしなみ”が身についた人物は、社会人になっても、礼儀正しく、節度のある人物となり、人々の信頼を得るであろうことは、容易に察することができます。
“しつけ”は、特に母親に大きな役割があります。まず、親が見本を見せなければなりません。毎朝、夫に対して「おはようございます」と挨拶をし、夫から呼ばれたら「はい」と返事をしましょう。そして、玄関に入ったらきちんと靴をそろえ、席を立つときはイスを入れて見せながら教えるのです。愛情を持って、優しく根気よく教えれば、必ず、子供の身についていきます。