世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

トランプ・金正恩会談(2回目)は2月?

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、1月7日から13日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 金正恩党委員長が訪中。習主席と会談へ(7日)。韓国地裁、徴用工訴訟で新日鐵住金が韓国内に持つ資産の差し押さえ決定(7日)。中朝首脳会談、約1時間で終了(8日)。日本政府、日韓請求権協定に基づく協議を韓国政府に要請(9日)。トランプ大統領、ダボス会議欠席表明(10日)、などです。

 今回は、1月8日に行われた中朝首脳会談と、近く開催される米朝首脳会談について説明します。

 1月7日、金正恩党委員長と李雪主夫人、さらに金英哲党副委員長、李容浩外相らが特別列車で北京入りしました。翌8日、約1時間の首脳会談でした。

 今回の金氏の訪中は、習近平主席が招請したものといわれています。自身の誕生日(8日)を北京で過ごし、今年初の外遊先に中国を選んだことは、金氏にとってこの訪中に懸ける思いが非常に大きいことを示しています。

 中朝両国は10日、首脳会談の結果を公表しましたが、その内容に「差異」があります。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は、金氏が米朝関係の改善と非核化の過程で生じた「艱難(かんなん)と憂慮、解決の展望」について説明したのに対し、習氏が「中国はこれからも(北朝鮮の)頼もしい後ろ盾である」と述べたと強調しています。
 しかし中国の報道はその点には触れず、経済関係に重点を置くものでした。人民日報系の環球時報は11日付社説で、「2019年は北朝鮮が社会主義経済建設の新たな道を切り開く元年でもある」と指摘。「新戦略路線を進む朝鮮労働党は今年、経済建設に全力を集中するだろう」との見方を示しています。

 また中国外務省は10日、2回目の米朝首脳会談について、正恩氏が「国際社会の歓迎する成果」を得られるよう努力すると述べた、と公表しました。しかし北朝鮮側の発表では省かれています。

 この時期の会談は両国にとって意味のあるものでした。
 中国は、米国との貿易交渉で北朝鮮を交渉材料として利用できます。7日は、米中の次官級貿易協議が始まった日です。北朝鮮は、2度目の米朝首脳会談に向けてて中国の後ろ盾を確認し、制裁緩和を要請したと思われます。特にエネルギー支援の拡大を求めたのではと考えられます。

 2回目の米朝首脳会談が近いのです。トランプ大統領は金氏に、2月中のベトナムでの開催を提案しています。

 韓国の東亜日報が10日に伝えた内容があります。
 今回の電撃訪中の背景に、金氏が北朝鮮内部で米国との非核化交渉の必要性を説得できていないことがあるというものです。金英哲党副委員長が同行した意味は、その点にあるのかもしれません。
 米朝首脳会談が迫っています。