世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

米中貿易交渉、中国が大きく譲歩か

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 12月17日から23日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 自民党、LGBTへの理解促進を求める法案骨子作成(17日)。政府は午前の閣議で新防衛大綱と中期防(中期防衛力整備計画)を決定(18日)。韓国・元徴用工ら約1100人が韓国政府に対して補償を求める訴訟を提起(20日)。米マティス国防長官、辞任を決断(大統領が決断したシリアからの軍の撤退に抗議)(20日)。防衛省、海上自衛隊のP1哨戒機が20日、韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーを照射されたと発表(21日)。中国政府、外資への技術移転強制が禁止へ。米側に大きく譲歩(23日)、などです。

 米中間の貿易紛争に関する内容、特に米中首脳会談(12月1日)後の動向について説明します。首脳会談では、米国が対中貿易関税引き上げを90日間延期することで合意していました。

 米国側の要求のポイントは以下の内容です。
 ①技術移転の強要をしない ②知的財産権を侵害しない ③非関税障壁(補助金など)撤廃 ④サイバー攻撃とサイバーによる窃取をやめる ⑤サービス業、農業に関する構造改革について、などです。

 来年1月の米中間協議を控え、中国側に大きな動きがありました。中国政府は12月23日、外資(外国資本)の技術を中国側に移転させることを禁じる「外商投資法」の立法作業に着手したというのです。中国政府はこれまで、「強制的な技術移転はない」との立場(中国政府の白書)でした。米側に大きく譲歩した形となります。

 この法案は23日、全人代(全国人民代表大会)の常務委員会に提案されました。中国共産党機関紙・人民日報によれば、草案では「外国企業の合法的な権益の保護を強める」としていて、権益保護策の一つとして、行政手段による強制的な技術移転を禁じるというものです。さらに外国企業が中国で活動する際のトラブルを訴え出るための仕組みも整備する、とあります。

 中国には、米トランプ政権の要求に応じて法整備を進める姿勢を示し、貿易摩擦を早急に解消する狙いがあります。日本や欧州もこれまで米政権と同様の批判を繰り返してきたのですが、中国は「強要」の存在自体を認めてきませんでした。
 今後、中国が技術移転の強要禁止を法制化しても、実効性があるかどうか見極める必要があります。1月の米中協議で、十分に詰めてもらいたい点です。

 「ファーウェイ事件」(米国の要請によりカナダ当局がCFOを逮捕した事件)の影響は極めて大きく、「ファイブ・アイズ」(軍事機密を共有する5カ国/米国・英国・オーストラリア・ニュージーランド・カナダ)だけでなく、日本、フランス、ドイツ、チェコなどにも5G通信網構築からファーウェイを排除の動きが広がっています。