愛の知恵袋 43
本物の夫婦となるために

(APTF『真の家庭』153号[7月]より)

関西心情教育研究所所長 林 信子

男性は本当に強いのか

 「男の子は強いのよ。泣いてはだめよ」「女の子は弱いの、いじめてはダメ」。幼稚園児くらいから、常に使われている言葉です。

 それがまったく逆であることをはっきり確認したのは、長男と長女が小学生になった頃でした。

 西宮市の兵庫医科大学付属の看護学校に、幼児教育講座を頼まれた時、話し終わって昼食会。横に腰掛けた婦長さんと話がはずんで、「わがままな患者さんも居られるでしょうね。だいたい男性の方がオーバーじゃないですか? わが家の主人と息子ときたら、体温が38度にもなると、主人は真っ赤な顔で『助けてくれぇ!』。息子は『死にそうだ!』ですよ。娘はね、39度でも『ママ、りんごむいてくれる』です。二人で『男性って弱いわねえ』と笑うんだけど…」

 婦長さんが答えました。「いいえ先生、男性は本当にコタエルのですよ。熱にも痛さにも…女性の何倍か…」「何倍も?」「3倍ぐらいかしら、ほら男性自身に野球の球が当たったら卒倒しますでしょう?」と笑った。

女性の体は柔軟に強く造られている

 そうか、男性と女性は根本が違うのだ。女性自身は、奥にかくされてあり、自分が生まれた時から卵子を持ち、受胎して目に見えないくらい小さい受精卵が数か月で3キロ前後の胎児に成長し、さらに羊水も含めて5キロ以上を胎内に持つ。体形は変わり、歩行も困難になる。女性はそれをみっともないとか、苦しいとか思わない。つわりがあって、苦しかったとしても、出産を止めようとは思わない。5か月から8か月、胎内で赤ちゃんが動き始め、生命の誕生に感謝する。大きな下腹を恥ずかしいなんて思わない。

 でも男性が妊娠したとしたらどうだろう。ズボンを買い替えた社長に「おはようございます。今月から6か月に入りますねえ。僕はもうすぐ出産日です。明日から休みます。社長も無事ご出産を——」なんて男性二人がしゃべるのだろうか? 男性は恥ずかしがり屋。とてもおなかが大きくなるブザマな姿にも出産の痛みにも耐えられない——。

 出産は女性に与えられた特権なのだ。生まれてから、ママの胸に抱かれる赤ちゃん。誰が抱いても泣くのに、ママに抱かれるとぴたりと泣きやむ。赤ちゃんのために女性は強く造られているのだ——。

 でもこれは男性に教えない方がいい。私の主人は、背も高くヒゲも濃く、足も速い。5歩も歩くと、私は走らないと追いつかない。主人は私を「チビ」と時々呼んだ。私は「智美(チビ)」と思っていた。重いものはすべて持ってくれたし、高い所のものはさっと取りに行ってくれた。海外出張の多い主人は、出かける時いつも、「ママは力がないから、手助けしろよ」と息子に必ず頼んでいました。

 本当は私はサル年、木にも登れば、天井裏くらいすいと登れる。灯油缶だって両手に持って走れる。でも主人と息子の前ではそんな特技をみせたことはない。

本物のカップルをつくりたい

 男性と女性は責任分担が違う。家庭を持つと男性は夫、父となる大黒柱。女性は細かく目を届かす現場監督。夫の目をみただけで、その日の仕事が理解できなければ、子供たちに伝えられない。男たちは毎日、勤務先で戦い続けている。

 私の義兄は、花園大出身。京都の名僧の一人ですが、ある時、私が「お義兄さんぐらいになると、もうさびしいことも、あせりも、人をうらやましく思うこともないでしょうね?」と質問したところ、「いやあ信子さん、私なんか凡人よ。いつまでたっても他の人が気になってつい比較する。よき夫、よき父であったという自信もない——」でした。

 人間、男性と女性は異なっていて、二人が結婚して一夫婦となる。そこから人間は成長し充実して本物になる。人は独りでいて完成はしない。私はまた次のお見合いパーティーで、本物のカップルを築くために、祈りと愛と労力と時間を投入しようと自分に言いきかせています。