2018.12.10 17:00
コラム・週刊Blessed Life 46
二人の偉大な先人への感謝
新海 一朗(コラムニスト)
現在の日本があるのは偉大な先人たちのおかげである、という思いを持つ人は少なくないでしょう。
日本には、機械、電気、エネルギー、金融などを中心とする先進産業国家としてのさまざまな基礎がしっかりと据えられているので、資源のない国家がここまで発展できたと素直に認めることができます。
その基礎は、実に、明治期に一人の経済的巨星が登場したことにより達成されました。彼の名は、埼玉県深谷市に生まれた渋沢栄一翁(1840~1931)であり、その業績は驚異的なもので、ドラッカーをして感嘆、心服せしめた傑物です。
よく言われることですが、渋沢栄一が関わった実業は「総数五百」と言いますから、これは明治期のほぼ全ての分野の企業に関係したと見てもよいくらいです。次々に事業を起こしていくそのエネルギーは一体どこから来たのかと驚くばかりです。
渋沢の精神は彼の言葉の中に明確に表現されていますから、その珠玉の言葉を研究すればよいわけです。
「目的には理想が伴わなければならない。その理想を実現するのが、人の務めである」という言葉の中に、渋沢がいかに理想の追求と実現に自らをささげていたかが分かります。
彼は激しく理想を追求していました。
遅れた日本を欧米並みに持っていこうと、欧米の産業を研究し、学んだ全てを日本に移植するために果てしない情熱を注いでいた明治の一人の男、それが渋沢栄一でした。
NHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」の主人公、西郷隆盛とはお互いに仲が良く、西郷の人柄に渋沢は惹(ひ)かれ、西郷も渋沢の道義をわきまえた誠実ぶりにほれ込んでいたといいます。一方、渋沢は大久保利通とは反りが合わず、お互いにぶつかることが多かったことが記録上もいろいろと残っています。
『論語』を愛した二人の大器は、心意気が合ったのでしょう。新しい日本のための政治理想を追求した西郷、新しい日本のための経済理想を追求した渋沢、理想を追求する者同士、政治と経済の世界で大いに活躍し、偉大な実績を残して、今日につながる日本の土台を築き上げてくれました。
ここに、偉大な二人の先人への感謝をささげたいと思います。