青少年事情と教育を考える 39
妊娠中絶16万5千件、10代は1万4千件

ナビゲーター:中田 孝誠

 2017年度の人工妊娠中絶件数は16万4621件だったことが、厚生労働省が10月に発表した「衛生行政報告例の概況」で分かりました。前年度に比べて3394件、割合では2.0%の減少です。

 年代別では、「20歳未満」が1万4128件(前年度比538件、3.7%減)、「20〜24歳」が3万9270件(同709件、1.8%増)、「25〜29歳」が3万2222件(同828件、2.5%減)、「30〜34歳」が3万3082件(同1174件、3.4%減)などです。20〜24歳がわずかに増加しています。

▲厚生労働省発表(2018年10月) ※画像をタップすると拡大してご覧になれます

 妊娠中絶は1950年代(昭和30年頃)には年間100万件を超えた年もありました。1955年は117万件でした。平成になった直後の1990年は45万件余りでしたが、現在までほぼ一貫して減少しています。
 一方、10代の妊娠中絶は、90年代後半から上昇し、2001年には実施率(女子人口千人当たり)が13.0となり、全体(11.8)を上回るほどになりました。その後は減少を続けています。2017年度の実施率は、全体が6.4、10代が4.8です。

 特に若い世代で妊娠中絶が減少している理由については、避妊指導、性教育などの成果があるのではないかといった意見があります。また、性行動の変化ではないかという専門家もいます。人間関係を持つこと自体を怖がったり、異性との交際を面倒と感じる若者が増えているというわけです。

 一方、10代の出生数は2016年度で1万1049人です。90年代に比べて、20代の出生数が大幅に減少しているのに対して、10代はそれほど大きな減少は見られません。
 また、日本では非嫡出子(婚姻届を出していない両親から生まれた子)の割合は2.3%ですが、10代に限ると30%です。望まない妊娠、予期しない妊娠は、児童虐待死につながるケースも少なくありません。

 妊娠中絶が減ること自体はもちろん喜ばしいことですが、結婚と出産、子供の養育、そして家庭の在り方といったことを含めて分析していく必要があります。