世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

米・中間選挙、トランプ氏「大成功」と評価

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 11月5日から11日を振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 米、対イラン制裁再発動(11月5日)。米国、中間選挙投開票(6日)。米朝高官級会談中止発表(8日)。米中外交・安全保障対話(10日)、などです。

 今回は、米国の中間選挙の結果と今後の展望について述べます。
 米国の中間選挙が、かつて、これほど世界中の注目を集めたことはなかったでしょう。投票率も前回より10%も上がり、47%台となりました。特に、女性や若者が動いたといわれています。

 結果は「想定内」でした。
 共和党が上院で過半数を維持し、下院は民主党が8年ぶりに奪還しました。「ねじれ」議会となりましたが、トランプ大統領は6日夜、ツイッターで「大成功、歴史的快挙」と評価しています。トランプ氏にとっては、負け惜しみではなく「想定した内容」以上との分析なのでしょう。

 何が「大成功」なのでしょうか。
 それは2年後の大統領選勝利の基盤をつくることに成功したということです。トランプ氏は昨年1月に就任以降、計23州で選挙集会を行いました。いずれも前回の大統領選に続き勝利の鍵を握る接戦州(スイングステート)と共和党が強い「赤い州」(米国メディアによる色分け)です。

 選挙戦を通じて各候補ともトランプ氏と同様の主張を展開し、集票に向けて各候補の「トランプ効果」への依存度が高まりました。その結果、共和党支持層の89%、保守層の73%がトランプ氏を支持するに至りました(ギャップ社調べ)。トランプ氏は、再選に向けて共和党の掌握に成功したと言えます。

 民主党は下院を握ったので、「ロシア疑惑」の追及を強め、トランプ氏「弾劾」を視野に攻勢に出てくるでしょう。しかし議会の3分の2の承認がなければならないので、「弾劾」のハードルは極めて高いのです。

 議会は「ねじれ」て予算が関わる政策履行は難しくなりました。でも、大統領権限で行える外交・安全保障・通商政策があり、一定の見える成果を国民に示すことはできます。

 今後、対中、対北朝鮮、対韓国、対欧州、対イラン、そして貿易問題を抱える日本への対応などが強化される可能性があります。
 北朝鮮の非核化が正念場を迎える中、日韓関係が揺れています。わが国は難しい舵取りを強いられることとなりますが、安倍政権への期待は高まる一方です。忍耐強くかつ毅然とした外交が必要となっています。