2024.11.06 17:00
「全人類の神」を説く
『FAX-NEWS』で連載した「四大聖人物語」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)
イエスとは別の道を行く洗礼ヨハネを残して、イエスは、荒野に分け入り40日40夜の断食をしました。サタンがやってきてイエスにささやきます。
神がイエス通してみ言と癒やし
「もしあなたが神の子であるなら、これらの石がパンになるように命じてごらんなさい」「もしあなたが神の子であるなら、(宮の頂上から)飛びおりてごらんなさい」
イエスは即座に答えます。
「人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出るひとつひとつの言葉で生きるものである」「主なるあなたの神を試みてはならない」
さらに悪魔はイエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せて言いました。
「もしあなたが、ひれ伏して私を拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう」
イエスは言う、「サタンよ、退け。主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ」。
サタンはうなだれてその場を去るしかありません。
荒野を後にしたイエスは、ガリラヤ湖周辺(現在のイスラエル北東部)で福音を伝え始めます。相手は明日をも知れない病人、嫌われ者の税金の取り立て役、さげすまれる娼婦。最初の弟子は、洗礼ヨハネの弟子であったアンデレと、その兄弟の漁師シモン(ペテロ)、さらにヨハネの弟子、ヨハネ、およびその兄弟の漁師ヤコブです。
弟子たちを連れて、イエスは久しぶりにナザレの家に帰りました。
カナの町の知り合いに婚礼があり、イエスと弟子たちは、母マリアと一緒に招かれました。マリアはいそいそと知人の婚礼の支度に精を出しています。
マリアはイエスに向かって、「ぶどう酒がなくなってしまいました」。
「婦人よ、あなたは、私となんの係わりがありますか。私の時は、まだきていません」
母親に向かって「婦人」というイエスの厳しい返答でした。そこには、イエスの結婚について考えようともしない母親への、イエスの無念さと悲痛な思いが込められています。
イエスはそれからもガリラヤで、み言を伝えます。同時に、重病人を回復させたり、悪霊にとりつかれて異常なふるまいをする人たちを癒やしたりしました。それらの「不思議な出来事」は、神の子イエスを通して行われた、神のなせる業なのです。
人々の心に染み入る愛と許し
「私が今していることこそ、父が私をおつかわしになったことを、示すものです」「私を信じる人は、私を信じるのではなく、私をつかわされたお方を信じ、見ているのです」
多くの群衆は、神の業を見て、イエスを信じ従いました。イエスは12人の使徒を選び、2人1組にして宣教に送り出します。
「心をつくし、精神をつくし、思いをつくしてあなたの神を愛しなさい」「自分を愛するように隣人を愛しなさい」「敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい」「だれかがあなたの右のほおを打つなら、左のほおをも向けてやりなさい」「だれかがあなたに罪をおかすなら7を70倍にしてゆるしなさい」
病ゆえに遠ざけられる人、卑しい仕事だと嫌われる人々の心にイエスの愛と許しの教えは染み入ります。
あるとき、12年間も病気で苦しんでいた女性が、群衆の中からそっと手を出して、イエスの衣に触れました。
「なんとか病気を治したい」。イエスは、そういう思いを感じ取ります。
「だれがわたしに触ったのか」
女性は戦慄します。おびえながら「わたくしです」。
「あなたの信仰が、あなたを救いました。安心しなさい」。イエスは女性の指先に、病気を治したいと思い続けた願いと祈りがこめられていたことを知っていたのです。
イエスの説く神は、ユダヤ人だけの神ではありません。全人類のための神です。かたくなな律法学者や高慢な祭司や財産のある貴族などは、イエスの教えを受け入れることができず、「悪霊の業」と非難しました。
イエスはわずかなパンと魚によって5000人に食べさせたことがあります。5000人もの群衆の心を、目の前で一つにしてしまうイエスの力。瞬時に人の心を溶かしてしまう愛の心。イエスの名が全土に広まるにつれ、律法学者たちは恐れをなし、ひそかにイエスを葬ることを決意し始めるのです。
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次回は、「罪のない者から石を投げよ」をお届けします。