青少年事情と教育を考える 36
「ほとんど毎日1人で食事」が10人に1人

ナビゲーター:中田 孝誠

 先日、新聞に次のような記事が出ていました。
 「IT(情報技術)で共食、一緒に食べる幸せ演出」(東京新聞、10月22日付)。

 共働きや一人暮らし世帯の増加によって、一人で食事をする「孤食」が増えています。それに対して、若い女性が食事をするCG(コンピューターを使用して画像や図形を作成する技術)の映像と向かい合って食事する疑似共食のシステムを大学で開発しているという話です。また、離れて暮らす家族が食卓をインターネットでつなげて共食する実験も行われていて、参加した家族は一緒に住んでいるかのように会話もでき、幸福感が増したそうです。

 農林水産省がまとめている「食育白書」(平成29年版)によると、孤食が「ほとんど毎日」だという人は11.0%です。「週に4~5日」あるという人を合わせると15.3%。7人に1人が週の半分以上は一人で食事をしているというわけです。これは2011年の調査から5ポイント増えています。

 孤食になる理由には、「食事の時間や場所が合わない」「一緒に食べる人がいない」「一人で食べることが都合がいいので、気にならない」などがあります。そして、高齢者の一人暮らしが増えていることも大きな要因になっています。

 調査によると、誰かと一緒に食事をする頻度が高い人ほど、食事のバランスがよく健康的な食生活を送っています。
 それだけではなく、孤食は心の健康にも影響しています。共食の頻度が高いほど「気が散ったり、根気がないなどの精神的な自覚症状が少ない」という調査結果が出ています。また、共食がほとんどないと「登校したくない」などと訴える割合が高いという調査もあります。

 家族団欒(だんらん)と言われるように、家族が一緒に食事をするのは、いわば昔からの生活の知恵でした。海外では、子供のために必ず家族一緒に夕食を囲めるよう、親が仕事から早く帰宅するという国もあるそうです。
 日本でも個人の自立がよく強調されますが、幸福感や子供の成長ということからも、こうした食事の場を大切にしたいところです。