愛の知恵袋 33
会話が弾めば、楽しい夫婦

(APTF『真の家庭』143号[9月]より)

松本雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

二人の会話がかみ合わない

 先回(7月号)の話と関連しますが、夫婦の会話について、もう一つのケースを紹介したいと思います。

 ある熟年のご夫婦と話していた時のことです。お二人は決して仲が悪いというわけではありませんが、「どうも楽しい会話ができない」と言うのです。奥さんは、「せっかく話し始めても話が続かないんです。彼に聞こうという気がないからでしょ!」と言います。すると、ご主人は、「いや、私だってあんたと楽しい話をしたいと思っているよ。でも、なぜか、かみ合わないんだよね…」と言います。

 このお二人の場合、どちらかが相手を無視しているというわけではありません。ご主人も奥さんも、「楽しい会話のできる夫婦になれたら…」と思っているのに、なぜか話が弾まないというのです。よく聞いてみると、お二人の”話したい話題”と”会話のテンポ”が合わないところに原因があるようです。このような課題は、多くの夫婦にも共通しています。

男性と女性では、好きな話題が違う

 まず最初に、男性と女性では、関心のある話題が違うということです。女性が好きな話題は、子育てのこと、買い物やお得情報、食べ物や料理法、健康やダイエット、化粧やファッション、周辺の人間模様、様々なうわさ話…などです。そこで、妻はこういう話題を夫に持ちかけますが、男性としてはあまり熱中したい話ではないので、適当に受け流して、そのうちにフッと消えていきます。夫からすると、「そんな細かいことは、どうでもいいよ…」といった感じなのでしょう。

 一方、男性が好きな話題は、仕事のこと、時事問題、自分の趣味、スポーツ、若い頃の自慢話、将来の夢、人生論などです。ところが、夫のこういった話に身を乗り出して聞いてくれる妻はめったにいません。「ハイハイ、もう何度も聞きました…」といった様子で、そのうちスッと立って皿洗いを始めたりします。

 このような状態では、夫婦に会話の接点がもてません。そのままでは晩年になっても、「あなたはあなたでお好きなように。私は私の好きにさせてもらいます」というような、会話の乏しい寂しい夫婦になってしまいます。

 そこで、夫婦で楽しい会話ができるようにするための第一の秘訣は、”同じブランコに乗ること”。お互いに歩み寄って、相手の話題に関心を持ちましょう。そして相手の話に乗ってあげ、自分も一緒に楽しめばよいのです。

 もっと良いのは、夫婦で共通の関心事を持つことです。二人が一緒に楽しめる趣味を持ったり、信仰を持ったり、ボランティア活動をしたりすれば、常に共通の話題があり、会話が枯れてしまうことはありません。

女性の会話は”3倍速”

 もう一つの問題点は、妻と夫の会話のテンポが合わないということです。奥さんが「あなた、明日、一緒に行く?」「……」返事が返って来ない。すると奥さんは、「あ、嫌なのね。じゃあ、やめときましょ」とさっさと自分で答えを出す。すると夫は「いや、ちょっと待って。考えてるんだよ…」と言いたげな顔。

 日頃、男性同士、あるいは女性同士で話す場合は、会話のテンポが同じですから支障はありません。ところが、夫と妻との会話になると、歩調が合わなくなるのです。男性たちが話している場面と、女性たちが話している場面をよく観察してみて下さい。何が違うかというと、”会話の速度”が全く違うのです。女性同士の会話は、話すほうも聞く人の反応も実に速く、言葉が縦横無尽に行き交います。双方が同時に話している時さえあります。その速度たるや、男性の会話と比べると2倍速、いや3倍速かもしれません。

相手のテンポに合わせてあげる

 しかし、男性同士の会話ではそうはいきません。おしゃべりタイプの男性は例外ですが、一般的に男性は、話す側と聞く側の立場がはっきりしていて、言葉のやりとりにも一定の間をおきます。相手から尋ねられても「うーん…」と言って、すぐには返答しない人も多いのです。

 ですから、夫婦の会話でも、妻の言葉に対して即答ができません。妻からすると、夫の「……」の時間が待ちきれません。「アッ、そう。関心ないのね」などと早合点して、さっさと店じまいをしてしまいます。夫と話しても反応が鈍くてイライラするという女性もいます。

 これは脳における男性と女性の思考パターンが違っているからだとも言われますが、理由はともあれ、お父さんに罪はありません。男性は、尋ねられてもパッと即答できないことも多いのです。せっかく同じブランコに乗っても、二人が調子を合わせて漕がないとうまくいきませんよね。

 というわけで、夫婦の会話を順調に進めるための第二の秘訣は、”3秒の忍耐”。

 妻は夫に何かを尋ねたら、1回深呼吸。心の中で「1、2、3」と数えましょう。3秒待ってあげるのです。そうすれば、ご主人からちゃんと返事が返って来ますよ。