シリーズ・「宗教」を読み解く 35
「霊的・精神的価値観」を取り込んだ社会へ

ナビゲーター:石丸 志信

 4月の欧州・中東ICL(国際指導者会議)でのスピーチで、エルマール・クーン博士は、「宗教が今日の社会に独自の貢献をなす必要がある」と主張した。

 「お金と権力を巡って展開する市民社会を正し、霊的、精神的要素を取り込める市民社会にしていく責任があり、モデルを示す使命がある。そのために、信仰を学び直し、その伝統に誇りを抱けるようにすること。宗教が社会の中で、より存在感を表す術を学び、多く発信し、より耳を傾けられる工夫をし、たくさん活動して、世の中から注目されるよう努力していくべきだ。今こそ宗教間の協力をすべき時であり、それは可能だ」と断言する。

 それは、多くの宗教者は、宗教が「唯一の人格的存在、慈悲深い神」によって創られたことを知っているからだと言う。

▲4月の欧州・中東ICLでスピーチするエルマール・クーン博士

 彼は、ヨーロッパの文脈で語っているが、テロやヘイトスピーチの広がりに対しても、「心の内に宿るテロリズム」と闘い、慈悲深い心を持つ必要性を説く。また、これからは多様な文化の統合と、包括的な宗教の在り方についての教育も重要だと語った。