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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A

 介護・福祉について分かりやすく解説する「ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A」のテキスト版をお届けします。
 ナビゲーターは、家庭連合本部の宮本知洋福祉部長が務めます。動画版も公開中ですので、併せてご視聴ください。

29回 障がい者福祉編⑪
「大人のADHD」とは何でしょうか?

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 医学用語・法律用語としては「障害」とし、一般的な用語としては「障がい」と表記しています。

 今回は、「最近、『大人のADHD』という言葉を耳にしました。大人のADHDとは何でしょうか?」という質問にお答えします。

 日本の発達障害者支援法では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義しています。

 この中の「注意欠陥多動性障害」というのがADHDなのですが、定義にありますように、ADHDを含む発達障害は通常低年齢において発現します。

 ですから「大人のADHD」といっても、大人になってからADHDを発症したわけではありません。子どもの時にはADHDだと気付かずに成長し、大人になってから医療機関を受診し、ADHDと診断されたということなのです。

 ADHDは極端に注意力が散漫であったり、衝動性の高い行動が見られたりする発達障害です。

 ADHDには、集中力がない、人の話を聞いていない、忘れ物やなくし物が多いなどの特徴がある「不注意タイプ」と、じっとしていられない、突然話し出す、順番を待てないなどの特徴がある「多動性・衝動性タイプ」、およびその両方の特徴を持った「混合タイプ」があります。

 通常は子どもの頃にADHDだと気付くことが多いのですが、行動特性が強くない場合や行動特性があっても周囲の人たちが受け止めてくれて問題が表面化しなかった場合、そうと気付かないまま大人になることもあります。

 そして社会人になり、仕事や日常生活の中で具体的な問題が生じるようになったため医療機関にかかったところADHDだと診断された、というケースも結構あるのです。

 子どもの頃は忘れ物やなくし物があっても笑って済まされるかもしれません。しかし社会人になってからも同様のことをしていれば仕事に支障を来し、責任問題になったり信用を失ったりしてしまうので、ご本人にとっては深刻な問題となるのです。

 ADHDの人は集中力や落ち着きがなく、時間やスケジュール、金銭・物の管理が苦手です。多動性・衝動性タイプの場合は感情が高ぶりやすかったり、一方的に話をしたりする傾向もあります。

 もし皆さんの中に、周囲が気になって目の前の仕事に集中できない、複数の仕事を同時にこなすことが苦手、約束や期限を忘れてしまう、衝動買いをしてしまう、なくし物・忘れ物が非常に多い、などで困っているというかたがいらっしゃれば、一度、専門機関で診断してもらってもよいでしょう。

 ADHDへの対応法には、薬物療法、環境調整、認知行動療法などがあります。

 薬物療法は、症状を抑え、改善するために薬を服用する方法です。

 薬にはいくつか種類があり、人によって合うものが違うので、主治医とよく相談しながら行う必要があります。

 次に環境調整は、生活や仕事の環境を調整したり、さまざまな工夫をしたりすることによって、ADHDの人の苦手な部分を補い、その特性故に起こる課題を克服しようとすることです。

 例えば、約束を忘れないようにスマホのリマインダー機能を使ったり、複数の仕事を行う際に抜け漏れをなくすためにタスク管理ツールを活用したりするのも一つの方法ですし、耳栓を付けたり、仕切り板を立てたりして、目の前の仕事に集中するための工夫をしている人もいます。

 さらに片付けが苦手な場合は同じ種類のものを同じ場所にまとめてしまうようにしたり、なくし物が多い場合は何かを使った後、決まった場所に決まった方法で入れるというルーティーンを作ったりするのも有効です。

 最後の認知行動療法は精神療法の一つで、極端な捉え方や考え方(認知のゆがみ)を改善し、状況にふさわしい行動が取れるようトレーニングを行う方法です。

 認知行動療法は医師やカウンセラーのもとで受けることができます。

 それでは、今回の講座はここまでにさせていただきます。