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コラム・週刊Blessed Life 306
日本の政治はどこへ行くのか

新海 一朗

 日本の政治はどこへ行くのでしょうか。そのように問わざるを得ないさまざまな不祥事が政権与党内に起きています。

 政治資金問題、松下新平議員(自民党)の秘書として潜入していた中国女性スパイの発覚、自民党「過激パーティー」の醜聞などの報道が続く中、日本の政治の質が劣化している、要するに、緩み切っていることを憂い、自民党に票を入れることをもうやめたという国民の声があちこちで上がるようになっています。

自由民主党本部

 では一体なぜ、日本の政治レベルがそんなに低くなったのか。
 よく聞かれる意見の中に、選挙制度の改悪で、議会と政党が国民の立場、意見、利害を忠実に代表、代弁してくれない状態になってしまったからというものがあります。

 小選挙区制になった結果、党の執行部が専制君主的な力を持ってしまったのです。
 「誰をこの選挙区の公認候補とするか」は、執行部の意向、中でも執行部のトップである総裁の意向で決まります。

 そして党の執行部は、国から支給される「政党助成金」をどう分配するかの決定権も持っています。
 この公認候補を決定する公認権と政党助成金を分配する権限、これが党執行部=総裁の専制的な権力の源です。

 公認されるか否かは、そのまま、当選か落選かに直結します。
 もし「党に公認」されなかったら、自分の選挙区から党公認の別の人が立候補することになります。

 それでも立候補はできますが、地元でこれまで支持母体となっていた自民党系の支持組織は、公認候補の方に行ってしまうので、支持組織を失うことになります。その上、政党助成金を原資に分配される選挙資金ももらえません。

 小選挙区制が生んだこのシステムは非常に厄介で、公認権と政党助成金分配権を総裁が握るので、そこに専制的な権力が生まれる結果をもたらしていると見ることができます。

 民主主義国家で、ひそかに独裁者を生む構図が生まれていると言ったら言い過ぎかもしれませんが、そのように見ることもできます。
 中選挙区制ではそんなことはありませんでした。

 その結果、自民党の国会議員たちは、多様な立場や意見、利害を代表、代弁する存在ではなくなりました。
 ごく一部の例外はありますが、残念ながら、今の自民党の国会議員の多くはこの公認権と助成金の分配のために、自由に物を言える議員がほぼいなくなりました。

 総裁や執行部にNOと言えば、公認を外され、追い出されてしまうのです。
 担当する行政について不見識で、官僚が作った文章を読み上げるだけのお粗末極まりない大臣たちの国会答弁は、その結果です。

 つまり小選挙区制は、政治家も政党も致命的に劣化させ、日本の政治レベルを下げてしまったのです。

 代表的な例を挙げるとすれば、2022831日の記者会見で、岸田文雄首相は世界平和統一家庭連合との関係を巡って「国民の皆さまから懸念や疑問の声を頂いている」とした上で、教団との関係を断ち切るという姿勢を鮮明にしました。

 その会見内容を受けて、自民党はどうなったか。誰一人、首相の断絶宣言に異議を申し立てる者はなく、そのまま従いました。
 まるで、習近平に盲従する共産主義の中国で見られるような場面が、この日本で簡単に出来上がってしまったのです。

 民主主義国家の中で専制主義的なものが誕生する仕組みが、小選挙区制の中にあることを認めないわけにはいきません。
 多様な立場や意見がやんわりと、どこからともなく否定される「隠れた専制主義」が存在するのです。
 LGBTの議員立法でも、首相の一方的号令で、同じような賛成多数の可決が見られました。

 日本は民主主義国家なのでしょうか。