2024.02.04 17:00
【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A
介護・福祉について分かりやすく解説する「ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A」のテキスト版をお届けします。
ナビゲーターは、家庭連合本部の宮本知洋福祉部長が務めます。動画版も公開中ですので、併せてご視聴ください。
第9回 高齢者福祉編⑧
父にデイサービスを利用してもらいたいのですが、行きたがりません
ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)
今回は、「父にデイサービスを利用してもらいたいのですが、行きたがりません。どうしたらよいでしょうか?」という質問です。
在宅介護をしているかたから「要介護者がデイサービスに行ってくれなくて困っている」という話をよく聞きます。
家族としては、「介護負担を軽くしたい」「家にこもらず人と交流して楽しく過ごしてほしい」「運動して元気に過ごしてほしい」などの希望があり、デイサービスに行ってほしいと訴えるのですが、なかなか言うことを聞いてくれないというのです。
では、ご本人がデイサービスに行きたがらない理由は何でしょうか。
「そんな年寄りじゃない」というプライドから来る抵抗感や、絵を描いたり歌を歌ったりして子供扱いされる所だというデイサービスへのネガティブなイメージ、集団で過ごすのが苦手で他人に気を使ってしまうなど、考えられる理由はいくつかあります。
家族の思いや事情があるのは当然ですが、ご本人の思いや事情もあることを忘れないようにしたいですね。
デイサービスは要介護者が日帰りで通い、食事・入浴・リハビリなどのサービスを受けられる場です。
一言でデイサービスと言っても、その施設には認知症対応型、食事が充実している施設、少人数で自宅にいるように過ごせる施設、カラオケや将棋、囲碁、園芸など趣味を楽しめる施設、男性または女性が多い施設、食事や入浴はなく、身体機能訓練中心の施設など、さまざまな種類があります。
雰囲気もスタッフによってかなり違います。
以前は、生活上のお世話をすることが介護であり、入浴や食事をして安全に過ごせたら、それでよいという考え方でした。
しかし、現在の介護保険では、高齢者ができるだけ自立して過ごせるよう、自宅との連携を取って心身の機能を維持・向上させていくことが求められており、専門的な資格を持ったスタッフがより高度な支援に取り組んでいます。
さて、要介護者のかたにデイサービスに行ってもらいたいと思われるのであれば、まず行く目的は何なのか、ご本人とご家族の考えをはっきりさせることが必要です。
もしお互いの思いにずれがあるのであれば、それを修正できるようしっかりと話し合いを行いましょう。
そして、ご本人が行きたいと思えるような施設を一緒に探してみることがよいと思います。
デイサービスの施設を探したい場合は、ケアマネージャーに目的や希望を伝えて紹介してもらいます。
実際に何カ所か見学し、可能であれば、雰囲気を知るために一日体験を利用してみてもよいでしょう。
ご本人が躊躇している場合は、ケアマネージャーやサービススタッフなど、第三者の立場から声を掛けてもらうのも効果的です。
利用後の変更や複数施設の利用も可能です。
ただ、そのようにしてもご本人が行くのを嫌がることもあります。
自宅に閉じこもりがちだったとしても、自立した生活ができており、そこまで家族が困っているのでなければ、無理強いせず、ご本人の気持ちを尊重することも必要です。
そのような場合は、ご家族がご本人に寄り添って、時間をかけて話し合っていきましょう。
誰でも歳を重ねれば、いずれ介護を受ける側になる可能性があります。
自分が介護される立場になったと仮定して考えてみたらよいでしょう。
ご本人が望む、精神的自立を重んじた生活をするために、どのような施設でどのような介護サービスを利用したらよいかを、ご家族みんなで考えていけたらいいと思います。
介護サービスは慣れていくものです。
終末期に近づくに従って利用度が上がっていきますので、その際、他人に自分の介護を任せることが難しい状態のままでは、本人と周囲の負担が増すことは理解しておく必要があると思います。