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青少年事情と教育を考える 253
「母」を大切にする社会に

ナビゲーター:中田 孝誠

 新しい年の最初は、家庭の今を考えるという意味で、“母親”について取り上げたいと思います。
 一つの問題提起として受け取っていただければ幸いです。

 AERA dot.(今月8日配信)に「母親としての責任を社会から押し付けられ、内面化 日本の女性たちが抱える母の不自由さ」という記事がありました。
 共働きでも育児の責任や負担は女性に押し付けられることは変わらない。女性たちは母でいることにしんどさを抱えている。社会制度を整えるのは重要だが、個人としての生き方が尊重される視点がなければ母親のしんどさはなくならない-という内容です。

 ここ数年、こうした記事や主張が目立つようになっています。
 記事に対してはさまざまな意見もあるでしょうが、産後うつや孤立育児の増加などを考えると、母親になった女性が悩みや苦しみを抱えていることは確かです。このことは男女や年齢を問わず理解していくべきですし、そうした女性を支える社会をつくっていくことが急がれます。特に父親(夫)の責任は重大です。

 一方で、“母親”になることがマイナスであるかのような風潮が広がることには不安を感じます。
 道徳教育の中でも、“母親”は重要なテーマです。よく知られている教材「お母さんの請求書」は、母親がどんな時でも無償で子供の世話をしていることから、母親の愛情、そして家族の愛情を考えさせる内容になっています。
 この教材にも最近はさまざま賛否の意見が上がっているようですが、多くの子供たちは母親の気持ちを感じ取っているようです。

 また、ユーチューブを見ると、24時間無給で働き放しの職業が実は“母親”の仕事だったという動画があります。
 世界各国の多様な人種の人たちが自身の母親を思い出し、感謝の言葉を述べているのが印象的です(【求人面接】世界一過酷な職業の実態)。

 子供の成長にとって、家庭、そして母親の存在がいかに大きいかは説明するまでもないでしょう。
 子供に愛情を注ぐ母親という生き方について、個人の生き方が尊重されていない、あるいは古いといった言葉で語られるようなことがあるとすれば、やはり不幸な社会となってしまいます。

 もちろん一方で、冒頭の記事のような母親のしんどさを語る女性たちの気持ちを推し量り、どうすればいいかを考えることも大切です。母親のしんどさ、女性のしんどさを改善し、支える社会を、父親、男性が責任を担ってつくりあげていく必要があります。

 現代は、家庭はもちろん“母親”をどう受け止めるかが問われているのではないでしょうか。そして“母親”をもっと大切にする社会を築いていかなければならないと感じます。