2023.12.25 17:00
コラム・週刊Blessed Life 295
終わりの見えないウクライナ戦争
新海 一朗
2022年2月24日に勃発した「ウクライナ戦争」は、2024年の2月で丸2年になります。
この戦争の終わりを考えなければならない時が来ています。だらだら続くならば、両国の戦死者と負傷者は合わせると30万人を超える数であると見られ、戦争が終わらない限り、犠牲者は大きく膨らんでいくだけです。
ウクライナ政府は、米国とEU(欧州連合)が約束した支援が実現しない場合、戦費をどう賄うか頭を悩ませています。
ゼレンスキー大統領はワシントン入りし、バイデン大統領が提案した600億ドル(約8兆7400億円)余りの支援を足止めさせている共和党議員に緊急の呼びかけを行いました。
しかし議員らは、民主党が移民・国境政策で「大転換」を受け入れるまでウクライナ追加支援はないと突っぱねています。
EUも500億ユーロ(約7兆8600億円)規模の支援パッケージを用意していますが、EU予算全体を問題視するハンガリーのオルバン首相の反対に遭っています。
欧米からの支援で戦ってきたウクライナですが、欧米側にも余裕がありませんから、ウクライナは資金という新たな困難に直面しているのです。EUと米国からの支援が、死活的に重要なウクライナにとって、欧米の渋りは命取りになります。
一方、12月14日、国民との対話と内外記者会見に臨んだロシアのプーチン大統領には自信がみなぎっていました。
ウクライナによる反転攻勢は、大きな成果を上げることなく袋小路に入っており、米国や欧州からのウクライナ支援が明らかなスローダウンを見せているからです。
消耗戦の様相を呈するウクライナ東部の戦場で、ロシア軍が敗北する兆候は見られず、侵攻当初こそ、ロシア経済は西側の強力な制裁によって痛打されましたが、現状ではロシアの経済は崩壊から程遠い状態です。エネルギー資源と食糧を持っているロシアの経済は強いと言わざるを得ません。
ロシア経済の実質国内総生産(GDP)は、2022年2月の開戦直後こそ、マイナス10%以上の後退が避けられないと見られたものの、結果的にはマイナス2.1%に留まるまで回復しました。
ミシュスチン首相が率いる政府と、ナビウリナ総裁の下で働くロシア中銀のテクノクラート(技術官僚)たちは、有能であることを証明しました。
財政と金融手段の両面で、西側の経済制裁によるショックを最大限和らげつつ、これまでのところハイパーインフレを起こさずに、戦時シフトの経済を強力に、かつ巧みにハンドリングすることに成功しています。
全ての軍需工場は、「戦争特需」に対応して投資を増やし、生産力を増強しているところです。
戦車や砲弾の生産量は西側諸国のそれをしのぐと思われます。国際通貨基金(IMF)は10月、2023年のGDP成長率を+2.2%と見直して、予想以上に景気が良いロシアの現実を追認しました。実績値は+2.5%ぐらいになるだろうと予測されます。
「グローバル・サウス」のさまざまな国や地域において、欧米のダブル・スタンダードや、先進国中心主義の資本主義経済のルールに不満を抱いている国々にとって、プーチンの侵略的なウクライナ戦争はさほど重要ではないといった感じです。
石油輸出国機構(OPEC)プラスの枠組みにおけるサウジアラビアとロシアの連携もあって、原油の輸出は相変わらずロシアの国庫を潤し続けています。
従って、プーチンが戦争をやめる気配はなく、それに対して、安易な戦争終結をよしとしないゼレンスキーの「頑張り」も、そのプライドの高さ故、国民の犠牲をも厭(いと)わないしぶとさを見せています。
そうなると、ウクライナ戦争はまだまだ続くと見なければならず、悲観的な見方をせざるを得ません。
果たしてどうなるのか、一刻も早い戦争終結を祈るばかりです。