2018.08.10 17:00
青少年事情と教育を考える 25
若者に広がる大麻
ナビゲーター:中田 孝誠
このところ、大麻による検挙者が増えています。
警察庁の統計によると、昨年、大麻事犯(使用、所持など法令違反で罰せられる行為)で検挙されたのは3,008人で過去最多となりました。
この5年間でほぼ倍増しています。
大麻検挙者のうち、特に10代は297人、20代が1,174人です。
やはり5年間で、おのおの5倍、2倍近く増えています。その年代の人口10万人当たりでは4.1人、9.4人です(平成25年は0.8人、4.8人でした)。
10代の中には、高校生53人、中学生2人が含まれます。高校生は平成25年が10人、26年に18人、27年に24人、28年に32人、そして29年が53人ですから、大麻の浸透ぶりがうかがえます。
一方、社会問題となっていた危険ドラッグは、厳しい取り締まりもあって検挙者が減っています。薬物犯罪全体の人数では覚せい剤が7割を占めていますが、検挙者数は減少してきています。それに比べると、大麻検挙者の増加の割合が際立っていることが分かります。
大麻が急増している原因はいくつかありますが、一つは大麻ワックス、大麻リキッドといった新しい加工品の登場があるようです。
大麻ワックスは乾燥大麻を濃縮したもの、大麻リキッドは高濃度の液体で、電子たばこで吸うことができます。インターネットで作り方が公開され、自宅で作ることもできるなど、若者にとって身近なものになってしまっています。
また、大麻は入門薬物といわれ、好奇心や興味本位で手を出す若者も少なくありません。「他の薬物より安全」「たばこより健康に害がない、依存性がない」といった、間違った認識を持っている若者も多くいます。
大麻事件の検挙者に聞いた調査では、大麻の危険性を認識していたのは3割しかいませんでした。
さらに、大麻を合法化している国があることも、「大麻は安全」という誤解を与えているようです。一昨年の参議院選挙で女優の候補者が医療用大麻の解禁を公約にしたこともありました。
実際には、大麻は脳の中枢神経に作用し、心身に重大な悪影響を及ぼします。依存性もあります。危険ドラッグも一時期ほど騒がれなくなり、社会全体に薬物に対する危機感が薄れているようにも感じられます。
学校でも薬物に関する教育は行われていますが、特に10代の子供たちを守るという意味で、大麻など薬物に対する厳しい姿勢を持っておくのが大人の責任ではないかと思います。