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愛と人生の道しるべ 10
愛は二人の間に生じる情的な力

 アプリで読む光言社書籍シリーズ第1弾、『若者に贈る~愛と人生の道しるべ』を毎週日曜日配信(予定)でお届けしています。

酒井 正樹・著

(光言社・刊『若者に贈る~愛と人生の道しるべ』より)

2章 愛は与えて無限に溢れる

愛は二人の間に生じる情的な力

 「愛されたい」という思いは、誰の心の根底にもあります。それは本来、家庭において父母から愛されて十分に満たされていなければならない欲求なのです。しかし、両親の愛情を十分に、完全に受けて育ったという人はあまりいないのではないでしょうか。

 マルティン・ブーバーという思想家は、「我」と「汝」という関係を結ぶとき、そこに愛が生じてくると語っています。つまり、愛というものは、自分と他との間に真実の関係を結んだとき、その二人の間に生じる豊かな情的力なのです。そしてそれは、すべての人々に喜びと幸福を与え得る根本的な力となるのです。

 この愛のパワーに包まれると、心の傷の一つ一つが癒やされ、何の思い煩いもなくなってしまいます。この愛の力は、他に与えても尽きることがなく、むしろ与えれば与えるほど、多く溢(あふ)れ出てくるようになります。男女に限らず、夫婦、親子、兄弟、親友、同僚へと広がっていきます。

 したがって、本物の愛を得る方法は、自分を愛してほしいと願い、要求することではなく、他人を優先して大切にし、与え尽くす生き方に切り替えることなのです。

 結婚した男女は、夫婦となって生活する中で、恋愛時代とは違った安心感や安らぎ、相手に尽くすことの喜びを感じるようになります。相手の欠点も含めて実際の人間を愛することを覚え、愛情も安定したものとなり、夫婦の性生活もいやらしいものではなく、愛情に満たされた幸福な時間となります。そして子供が生まれると、親としての愛情が自然に湧き上がってくるようになります。

 「この子のために仕事を頑張ろう」と思い、子供のためにも、もっと仲の良い夫婦になろうと思います。

 夫婦、親子の関係の中で、相手を大事にしたい、幸せにしてあげたいという思いが自然に湧き上がってくるようになります。このような自らが主体的に愛する愛が真実の愛なのであり、人間は愛されただけ人を愛することができるようになり、信じられただけ人を信じることができるようになります。

 中世ヨーロッパの聖人として尊敬されている、アッシジの聖フランチェスコの作といわれている、次のような「平和の祈り」があります。

 主よ、あなたの平和を人びとにもたらす道具として、
 わたしをお使いください。

 憎しみのあるところに愛を、
 不当な扱いのあるところにはゆるしを、
 分裂のあるところには一致を、
 疑惑のあるところには信仰を、
 誤っているところには真理を、
 絶望のあるところには希望を、
 くらやみのあるところには光を、
 悲しみのあるところには
 喜びをもっていくことができますように。

 慰められることを求めるよりは
 慰めることを、
 理解されることよりは
 理解することを、
 愛されることよりは
 愛することを求める心をお与えください。

 わたしたちは自分に死ぬことによって
 自分を見いだし、
 自分自身に死ぬことによって
 永遠のいのちをいただくのですから。

(続く)

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 次回は、「結婚の条件とは」をお届けします。


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