青少年事情と教育を考える 23
子供の学力、非認知スキルを高める親子の関わり

ナビゲーター:中田 孝誠

 子供の自尊心や協調性、忍耐力、何かをやり抜く力などを「非認知スキル」「非認知能力」といいます。学力のように数値化できる能力(認知スキル)に対して、非認知スキルは数値化できない能力です。

 先日、文部科学省が全国学力調査に合わせて、小学6年生と中学3年生の保護者に聞いた調査の結果を公表しました(「平成29年度全国学力・学習状況調査『保護者に対する調査』」)。

 これを見ると、家庭の所得や両親の学歴が高い子供のほうが平均して学力調査の得点が高いという傾向がありました。

 もちろん、所得や両親の学歴が低くても学力が高い子もいます。
 そうした家庭環境でも学力が高い子供の場合、物事を最後までやり遂げる姿勢や異なる考えを持つ他者とコミュニケーションする能力など非認知スキルが高い傾向があるということです。
 今回の調査を分析した報告書には、「非認知スキルを高めることができれば、学力を押し上げる可能性がある」と書かれています。

▲「平成29年度全国学力・学習状況調査『保護者に対する調査』」をお茶の水女子大学の研究グループ(代表・浜野隆教授)が分析。(画像をタップすると拡大してご覧になれます)

 親の方では、規則的な生活習慣を整えたり、子供に「文字に親しむように促す」「知的な好奇心を高めるように働きかける」「学校の出来事、友達のこと、勉強や成績のこと、将来や進路、地域や社会の出来事等、会話が多い」「テレビ、ビデオなどのルールを決めている」「努力すること、最後までやり抜くことの大切さを教える」「人の役に立つ人間になることを重視する」といった働きかけをするほど、子供の学力が高い傾向がありました。
 こうした親の関わり方が、子供の非認知スキルに影響を与えているということでしょう。

▲「平成29年度全国学力・学習状況調査『保護者に対する調査』」をお茶の水女子大学の研究グループ(代表・浜野隆教授)が分析。(画像をタップすると拡大してご覧になれます)

 ちなみに、ノーベル経済学賞を受賞し『幼児教育の経済学』で有名な米シカゴ大学のヘックマン教授も、家庭の所得が低くても学力が高い子供は、生活習慣や学習習慣が高いと述べています。また、日本でもお茶の水女子大学の内田伸子名誉教授が、子供の学力格差は、経済格差以上に親子の関わり方が重要という国際比較の調査を発表しています。

 親の関わり方が大切。ごく当たり前だとも思いますが、最近は軽視されているような気がします。このことをもう一度、社会全体で思い起こし、親が子供ときちんと関わることができるような環境を、国全体で協力してつくっていくべきだと思います。