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青少年事情と教育を考える 228
子供の自殺予防に必要なこと

ナビゲーター:中田 孝誠

 最近の子供の問題で気になるのが、自殺の増加です。
 昨年、子供(児童生徒)の自殺者数が514人で過去最多になったことが、警察庁と厚生労働省のまとめで明らかになりました。500人を超えるのは初めてのことです。

 日本の自殺者の総数は2003年に3万4千人を超えるなど一時は年間3万人に達していました。その後、2006年に施行された自殺対策基本法をもとに対策が行われ、自殺者数は徐々に減少、昨年は2万1881人となりました。
 一方で、児童生徒の場合はこの10年ほどは、ほぼ増加傾向にあります。

 昨年の内訳を見ると、小学生が17人、中学生は143人、高校生は354人です。高校生が7割近くを占めています。

 自殺の原因・動機(家族の聞き取りなどをもとに、一人につき最大四つまで挙げている)は、「学校問題」が281人(小学生8人、中学生84人、高校生189人)で、全体の半数を超えています。

 詳しく見ると、「学業不振」「進路に関する悩み(入試以外)」「学友との不和(いじめ以外)」「入試に関する悩み」が目立ちます。
 次いで「健康問題」が129人(小学生3人、中学生25人、高校生101人)、「家庭問題」が114人(小学生4人、中学生43人、高校生67人)です。

 厚生労働省の自殺対策白書によると、15〜29歳の死因の半数以上が自殺です。OECD(経済協力開発機構)の統計でも、日本の若者の自殺率は高くなっています(38カ国中で男性9位、女性7位)。

 こうした事態に、こども家庭庁では関係省庁の担当者で構成する「こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議」を設置しました。
 この中で今後の対策として検討されているのは、例えば市区町村レベルで設置されている「子ども家庭総合支援拠点」(児童福祉)と「子育て世代包括支援センター」(母子保健)の組織を見直し、「こども家庭センター」を設置することです。

 こども家庭センターを拠点としながら、児童相談所をはじめ、子ども食堂や保育所、学校、放課後児童クラブ・児童館、子育てひろばなど、各分野で連携して、妊産婦、子育て世帯、子供を対象に一体的に相談支援を行うという考えです。

 また、文部科学省では1人1台端末を活用した自殺リスク等の早期発見・早期対応するための取り組み、自殺予防教育(心の危機のサインを理解し、心の危機に陥った自分自身や友人への関わり方を学び、地域の援助機関を知る)を進めるとしています。

 厚労省では、精神科医や心理士など専門家で構成され「若者の自殺危機対応チーム」を新たに設置するとしています。

 子供だけでなく、親を含めた一体的な支援という施策は重要です。また、いじめの問題などでも見られますが、子供が誰にも相談できないというケースも少なくありません。
 一体的な支援を実現し、子供を孤立させないためには、家庭はもちろん、学校と地域社会で問題意識と具体的な目標を共有する努力が必要ではないでしょうか。