https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4141

コラム・週刊Blessed Life 254
戦闘の長期化は避けられないウクライナ情勢

新海 一朗

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから、224日で1年となりました。
 プーチン大統領は現状を欧米との全面的な戦いの構図になっていると判断し、兵力の増強を図っています。

 一方のウクライナも、欧米の軍事支援を受けながら、領土の奪還を果たすまで停戦に応じない構えです。
 戦闘が一層長期化するのは避けられない情勢です。

 ロシア軍は、動員兵も戦地に派遣するなどして兵力の増強を図り、当面は東部ドネツク州とルハンシク州の完全掌握を狙って大規模な攻撃を行っています。
 これに対してウクライナ軍は、欧米側から供与された兵器を駆使しながら反撃を続けています。

 ウクライナ軍は23日、ロシア軍がこの1年でおよそ8500回のミサイル攻撃や空爆を行い、1100回もの無人機による攻撃を繰り返したと発表しました。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、これまでに8000人を超えるウクライナの一般市民が死亡したと発表しています。
 双方の兵士の死傷者も増え続け、イギリス国防省によれば、今月、ロシア軍の兵士や民間軍事会社の戦闘員の死傷者数が合わせて20万人に上る可能性を指摘しています。

 プーチン大統領は23日、核弾頭が搭載できる新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を実戦配備するとして、核戦力を誇示しました。今や欧米との全面的な戦いの構図になっているとして、軍事侵攻を継続する姿勢を強めています。

 一方、ゼレンスキー大統領も、占領された領土の奪還を果たすまで停戦に応じない構えで、この春以降、大規模な反転攻勢に乗り出すと見られます。
 停戦は見通せず、戦闘の長期化は避けられない情勢です。

 現在、焦点となっているのが、ドネツク州のウクライナ側の拠点バフムトの周辺で、このところ、ロシア軍やロシアの民間軍事会社ワグネルは、攻撃を激化させています。
 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、ロシア軍がすでに大規模な攻撃を始めているという認識を、213日にはっきりと示しました。

 この春には、ウクライナ軍に欧米の主力戦車が届き始め、反転攻勢が強まるという見方が広がっていて、ロシアのゲラシモフ参謀総長がこれを抑え込もうと、一層攻撃を強化することが懸念されています。

 以上の戦況の概略を見ると、ロシアのウクライナ軍事侵攻による戦闘はやむ気配がなく、少なくとももう1年、あるいは、それ以上に続く可能性も考えられます。

 ウクライナが善戦してきた理由に、欧米からの軍事支援、すなわち対戦車ミサイル「ジャベリン」や地対空ミサイル「スティンガー」の存在があります。また、戦況を大きく変えることができる「ゲームチェンジャー」ともいわれた高機動ロケット砲システム「ハイマース」などの威力が挙げられます。

 これらのおかげで対ロシア戦を持ちこたえてきたことは明らかであり、こういった高性能の武器供与がどこまで続くか、欧米の支援体力が問われることになります。

 プーチンとゼレンスキーが、内心では停戦を望んだとしても、自国に有利なタイミングの探り合いをする中で、結局、戦闘の長期化という泥沼にはまってしまうことが起きると、この戦争の悲劇は増大します。
 最悪は核使用ということになりますが、何としても、その前に停戦すべきなのです。