https://www.kogensha.jp

【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉QA

38回 障がい者福祉編⑳
心情文化共同体の実現を目指して
~「障がい者福祉編」終了に当たって~

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 医学用語・法律用語としては「障害」とし、一般的な用語としては「障がい」と表記しています。

 これまで19回にわたり、Q&A形式で障がい者福祉についてのお話をしてまいりました。今回の講座を通して、障がい者福祉が時代と共に充実してきたということがご理解いただけたと思います。

 障がいのあるかたやそのご家族は、これまでご苦労やご不便も多かったでしょうが、ご紹介した社会資源などを積極的に活用して、困りごとの解決や生活の充実を図っていただければと思います。

 またご本人やご家族以外のかたにおかれましても、この講座を通して、障がいに対する理解を深めていただけたなら感謝に堪えません。

 ご家族の役割が重要なのは当然ですが、周囲のかたがたの支援や配慮もとても大切です。支援や配慮を行うためには、まず障がいに対する理解が必要ですし、理解は関心を持つことから始まります。一人でも多くのかたが講座を視聴し、障がいに関心を持っていただければと願っています。

 障がい者のかたがたは、これまで多くの偏見や差別を受けてきました。しかし、志あるかたがたの努力によって状況が改善されてきたという歴史があります。

 バンク・ミケルセンがデンマークで知的障害者法を制定し、「ノーマライゼーションの父」と呼ばれるようになったことは、この講座でも紹介しました。

 日本においても、精神科医として精神障害者の人権擁護のために奮闘した呉秀三氏や、身体障害者のスポーツ振興を図り、「日本パラリンピックの父」と呼ばれた中村裕(ゆたか)氏など、障がい者福祉に貢献したかたは多くいらっしゃいます。

 私たちはそのようなかたがたの思いを受け継ぎ、障がい者のかたがたが偏見や差別を一切受けないばかりでなく、一般社会の中で普通に生活を送ることができる社会を実現していかなければなりません。そしてさらに、障がいのある人に限らず、全ての人が孤立したり、排除されたりすることのない、インクルーシブな社会へと発展させていく必要があります。

 私たちが築こうとしている心情文化共同体の中には、さまざまな人がいます。困り事を抱え、支援を必要としている人も少なくないでしょう。周囲に障がいのある人がいれば、その人が必要としている支援を提供してあげられるように努めていただければと思います。

 一口に「障がい」と言ってもさまざまな種類があり、同じ障がいであったとしても、状態や程度、課題などは一人一人違います。今回の講座で学んだ内容が当てはまる場合もあるし、そうでない場合もあるかもしれません。

 やはり障がいのある人に接する場合は、基本的内容の理解を土台としながら、その人に必要なことを個別的に考えなければなりません。その人が「何に困っているのか」、「何をお手伝いしてあげられるのか」など、一人一人のニーズに応えていく姿勢を持てば、「ために生きる」ということがより実体的になると思います。

 また、困っていたり、苦しんだりしているのは障がいを抱えている人だけではありません。抑うつ的になっている人がいれば、声をかけて話を聞いてあげ、必要な支援につなげてあげるゲートキーパーとしての役割を果たすことが願われます。いじめやパワハラを受けて困っている人がいれば、積極的に相談に乗ってあげられたら素晴らしいですね。

 そのようにして身近な人の問題解決に取り組んでいけば、それが地域に拡大し、そこに住む人たちと本当の家族のような関係を築くことができるのではないかと思います。

 そこから天一国のひな型ができていくでしょう。

 今回の講座を通し、障がい者福祉に関心を持ち、身近なこととして考えていただけるかたが増えたなら、とてもありがたく思います。

 これまで視聴してくださったかたがたに、心から感謝申し上げます。

 それでは、「ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A〈障がい者福祉編〉」をこれで終了させていただきます。