コラム・週刊Blessed Life 241
虎視眈々(たんたん)と台湾を狙う中国共産党と習近平の野望

新海 一朗

 3期目の習近平政権が中国共産党の第20回大会において承認され、「習近平総書記が全てを握った」という印象を世界中が抱いたことでしょう。
 決して経験豊富とは言えない側近たちを政治局員(党序列上位の25人)や中央委員(205人)に次々に起用し、習近平氏を含めた政治局常務委員7人は、王滬寧(おう・こねい)氏を除いて、全て習近平派のイエスマンになりました。

 常務委員で、習近平氏以外に選ばれたのは、李強、趙楽際、王滬寧、蔡奇、丁薛祥(てい・せつしょう)、李希の6人でした。ほぼ、習近平氏の言いなりになるメンバーです。
 これで、習近平氏は「やりたいことをやる」「やりたいことをやれる」政権をつくり上げたわけです。
 一体、何をやりたいのかと言えば、台湾侵攻が習氏の野望としてある限り、それをいよいよ実行に移す段階に来ているということです。

 米国は、今後、政治、経済、軍事などの各分野において自国の「自由主義・民主主義」と中国の「全体主義・共産主義」との間に激しい競争が展開されることを覚悟しています。
 中国による台湾侵攻は、米国のナンシー・ペロシ下院議長が、8月初めに台湾訪問した直後、中国人民解放軍が大規模な軍事演習に踏み切った経緯があり、「台湾海峡、波高し」「偶発的な軍事衝突の恐れあり」の危険性がますます高まっています。

 ウクライナへの侵攻を続けるロシアのプーチン大統領と習近平氏の接近は、「特別な関係」をつくり上げつつあります。
 習氏にとってプーチン氏は、米国の覇権を弱体化させるために協力できる最大のパートナーであるとの認識を持っていることは否定できません。当然、中国とロシアが、有事の際に、どのような軍事協力、情報操作を行うかなど、米国は中露の戦略を探っているはずです。

 202139日、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)が米上院軍事委員会の公聴会で「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と証言しました。
 続いて、次期インド太平洋司令官候補のジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令(当時)も上院の公聴会で「中国の台湾侵攻は大多数の人たちが考えているより間近に迫っている」と述べました。
 中国が考える台湾統一のリミットはどこにあるのか。専門家筋でいわれているのは、「2027年」という見方です。もちろん、早まることも十分に考えられます。

 この2027年というのは、習近平の3期目の任期が終わるタイミングであり、同時に解放軍建軍100周年という節目に当たります。そして、もし2024年の台湾総統選で民進党候補が総統になったとしたら、その2期目をかけた2028年の台湾総統選の前年ということになります。しかし、台湾が大人しく中国に併合されるとは思えないので、当然、軍事的衝突は避けられません。

 人民大学国際関係学院の金燦栄教授が『日本経済新聞』(2022131日付)の単独インタビューで、「2022年秋の共産党大会が終われば、武力統一のシナリオが現実味を増す。解放軍の建軍から100年となる2027年までに武力統一に動く可能性は非常に高い」と語り、さらに、金教授は「中国は1週間以内に台湾を武力統一できる能力をすでに有している」と主張、「解放軍は海岸線から1000カイリ(約1800km)以内ならば、相手が米軍であっても打ち負かせる」「台湾有事に日本は絶対に介入すべきではない。この問題で米国はすでに中国に勝つことはできない。日本が介入するなら中国は日本もたたかざるを得ない。新しい変化が起きていることに気付くべきだ」などと語っているのです。