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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉QA

28回 障がい者福祉編⑩
発達障害は個性? 発達障害は障がいではないのでしょうか?

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 医学用語・法律用語としては「障害」とし、一般的な用語としては「障がい」と表記しています。

 今回は、「発達障害は個性であるという話を聞きました。発達障害は障がいではないのでしょうか?」という質問にお答えします。

 発達障害が「障がいなのか? そうではないのか?」「それを『個性』と言うことができるのか?」ということについては簡単に答えられない問題でありますし、人によっても、また観点によっても答えが違ってくるかもしれません。

 ですから今回は、ご質問に対する直接的な回答にはならないかもしれませんが、それにまつわる考え方として「発達凸凹(でこぼこ)」という考え方をご紹介したいと思います。

 発達障害の権威とも言えるかたで、杉山登志郎先生という精神科医がいらっしゃいます。その杉山先生が提唱されているのが発達凸凹です。発達凸凹とは、発達障害の特徴を持って生まれた人のことです。

 知覚、理解、記憶、推論、問題解決などの知的活動のことを「認知」と言いますが、発達障害でない人はこの認知能力の高い部分と低い部分の差がそれほどありません。

 しかし、発達障害の場合は、それぞれの認知能力に極端な差が見られます。だから得意な分野においては誰にも負けないほどの知識を持っていたり、とても優秀な成績を残したりするのに、社会性やコミュニケーション、想像力などにおいては非常に劣っている、などということが起こるのです。

 このように、その人の中における認知能力の差が極端に大きい場合を「発達凸凹」と呼んでいるのです。

 では発達凸凹の人は皆、発達障害を抱えた「障がい者」なのでしょうか。

 先ほどご紹介した杉山先生は、発達凸凹の人の中で適応障害を発症した人が発達障害であると言っておられます。

 適応障害とは、生活の中で生じる日常的なストレスにうまく対処することができないことによって、抑うつや不安感などの精神症状や行動面における変化が現れて社会生活に支障をきたす疾患のことです。

 つまり、発達凸凹があっても、大きなストレスを抱えることなく日常生活を送り、社会にも適応できていれば、発達障害ではないということです。

 ただし以前にもお話ししましたように、発達凸凹のある人は、学校でも会社でも、生きづらさを感じ、ストレスを抱えてしまうことが多いのが現状です。
 できることとできないことの差が大きいと、事情が分からない人は「あれはできるのに、どうしてこんなことができないのか」というふうに思ってしまいがちなのです。

 行政の支援や本人の努力とともに、周囲の人たちが理解と配慮をすることで、発達凸凹の人が適応障害にならないようにしていくことが重要だと思います。

 ところで最近は発達凸凹の人に対して、凹の部分、すなわち弱みや不得意分野を気にするより、凸の部分、すなわち強みや得意分野を生かしていこうという考え方が主流になりつつあります。
 実際、発達障害を抱えながら、ある分野で立派な業績を残している人はたくさんいます。自分の強みを生かした職業選択をするという考え方も必要になります。

 最後に、「障害」という言葉についてお話しします。

 最近、「障害」という言葉を文字にする際、「害(がい)」を漢字ではなく平仮名で表記することが多くなりました。
 その理由の一つに、漢字の「害」という字に「さまたげとなるもの、わざわい」(広辞苑)という意味があり、漢字を使うと、他人に害を及ぼす者というニュアンスが生じてしまう可能性があることが挙げられます。

 障がい者のかたがたはこれまで多くの偏見や差別を受けてきたという歴史があります。私たちはその反省を踏まえて、障がい者のかたがたの気持ちを理解し、具体的な配慮をしていく必要があるのです。

 それでは、今回の講座はここまでにさせていただきます。