2022.10.26 22:00
【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A
第26回 障がい者福祉編⑧
発達障害とは、どのような障がいなのでしょうか?
ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)
医学用語・法律用語としては「障害」とし、一般的な用語としては「障がい」と表記しています。
今回は、「最近、友人のお子さんが発達障害と診断されたと聞きました。発達障害とは、どのような障がいなのでしょうか?」という質問にお答えします。
発達障害は生まれつきの脳の障がいのために、主に行動・コミュニケーション・社会適応の面において課題が生じる障がいです。
世界保健機関(WHO)やアメリカ精神医学会のマニュアルでは、精神疾患の一つとして分類されていて、日本の障害者基本法でも「発達障害を精神障害に含む」とされています。
ただその一方で、日本では「発達障害者支援法」という別の法律で発達障害を規定していますので、同じ精神疾患でも統合失調症や双極性障害などとは一線を画した位置付けになっていると言えるでしょう。
発達障害は先天的な脳機能障害だと考えられていますが、なぜ発症するかについては明確には解明されていません。
発達障害の症状には服薬である程度抑えられるものもありますが、現状では根本的な治療法はないものがほとんどです。
ですから発達障害に対しては、治療ではなく、症状とうまく付き合いながら日常生活を送り、社会に適応するための工夫について一緒に考えたり、生活訓練を行ったりします。それを「療育」あるいは「発達支援」と呼んでいます。
発達障害は通常、低年齢において発現します。
2012年に小中学校の通常学級で行った調査で、教師が見て、知的発達に遅れはないものの、学習面または行動面で著しい困難を示す児童生徒が「6.5%いる」という結果が出ました。
ここで「学習面または行動面で著しい困難を示す」というのは、具体的には発達障害の特性を指しています。つまり、医療者による正式な診断ではないものの、教師から見て発達障害の可能性があると思われる児童生徒が6.5%いたということです。40人学級で2~3人いるということですから、決して少数ではありません。
発達障害には、主に自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(学習障害)があります。これらは重なり合って出現することもしばしばあります。
発達障害は知的障害を伴うこともありますが、以前「アスペルガー症候群」と呼ばれていた人のように、知的な遅れが全くない場合もあります。
発達障害の中でも発症率が高いとされる自閉スペクトラム症は、他の人とのコミュニケーションが極端に苦手で対人関係や社会性に障がいが生じるものです。
子どもの頃は、言葉の発達が遅い、こだわりが強い、同じ行動を延々と繰り返す、興味・関心の範囲が狭いなどの特徴が見られます。成長してからは、人の気持ちに共感できない、場の空気を読めない、抽象的な表現が理解できない、臨機応変に行動できないなどの特徴が見られるようになります。
次にADHDは、極端に注意力が散漫であったり、衝動性の高い行動が見られたりする発達障害です。
ADHDには、不注意タイプと多動性・衝動性タイプ、およびそれらが混合したタイプがあります。不注意タイプは、集中力がない、人の話を聞いていない、忘れ物や失くし物が多いという特徴が見られます。多動性・衝動性タイプは、じっとしていられない、突然話し出す、順番を待てないなどの特徴があり、混合タイプは、不注意タイプと多動性・衝動性タイプの両方の特徴を持っています。
ADHDの特に多動性・衝動性タイプは、年齢と共に行動面の症状は落ち着いてきます。ただし、根底にはその特性が残っているとされます。
三つ目の限局性学習症は、知的水準自体は低くないのに、読む、書く、計算するなどのうち、特定の分野の学習能力だけが極端に低いという障がいです。中でも、最も多いのが読字障害です。
限局性学習症の子どもたちには、教育的な支援が必要になります。
発達障害は、他の人からは認識されにくい障がいの一つです。
発達障害の人は、その障がい特性から他の人を不快にさせてしまったり、仕事でトラブルを起こしてしまったりすることがあり、周囲の理解がないととてもつらい思いをします。
生きづらさを抱えている発達障害の人に対して、私たちも理解を深め、配慮をしていきたいものです。
それでは、今回の講座はここまでにさせていただきます。