青少年事情と教育を考える 212
子供と絵本の関わり

ナビゲーター:中田 孝誠

 文部科学省は現在、子供たちの読書活動について話し合う専門家の委員会を継続して開催しています(「子供の読書活動の推進に関する有識者会議」)。

 7月に行われた会議では、「デジタルメディア時代における子どもと絵本・本の関わりについて」という興味深い研究報告がありました(東京大学発達保育実践政策学センターの佐藤賢輔氏)。
 以下、会議の配布資料を元に引用します。

 例えば、未就学児の子供の保護者に家庭での子供の読書時間を聞いたところ、平日は平均12.7分、休日でも15.2分でした。10分以下の子供が過半数です。

 また、1週間当たり大人と一緒に絵本・本を読む頻度はさまざまで、「0日」の子供が12.1%、「1日」が20.6%だった一方、「7日」つまり毎日読むという子も18.2%いて、子供たちの間の差が顕著になっています。

 次に、子供の読書は紙とデジタルのどちらがいいかを聞くと、「紙の絵本や本の方が好ましい」(「どちらかと言えば」を含む)が9割(91%)を占めています。
 子供がデジタルの絵本・本を読むことに、保護者はまだ否定的のようです。

 一方、佐藤氏らの調査によると、紙とデジタルの絵本では、子供たちの内容理解に差はありませんでした。ただ、子供は紙の絵本の方がより楽しく、集中しやすい傾向が見られたそうです。

 どちらが良いということではなく、デジタル絵本にはさまざまな機能を付けることができ、紙の絵本は読みを調整できることなど自由度が高いといったメリットがあります。

 学校現場ではデジタル教科書の導入が本格化します。子供たちはデジタルの本に接することが増えてくるわけです。その点からも、デジタルと紙双方の良さを生かすことが大切になってきます。実際、学校現場では両方のバランスを取って活用する例が多いようです。

 また、それ以前の根本的な課題として、子供たちの読書量が減っていることが気になります。
 本欄でもたびたび触れましたが、子供の頃の読書が多い人は、非認知能力と認知能力が高い傾向にあるという調査もあります。
 家庭での読書を意識したいところです。