青少年事情と教育を考える 210
子供・若者の居場所が少なくなっている?

ナビゲーター:中田 孝誠

 内閣府のウェブサイトに「子供・若者インデックスボード」というページがあります。
 子供・若者の生育状況などのデータを可視化し、子供・若者の育成に生かそうというものです。
 内容は、「子供・若者の意識」(自己について、周囲について、支援について)、「取り巻く状況」、「満足度・生活の質を表す指標群」です。
 データは随時更新されていて、今の子供たち、若者たちの状況の一端を知ることができます。先月、バージョン3.0が公開されました。

 それを見ると、特徴の一つは「ほっとできる場所」があるという子供が少しずつ減っているということです。
 例えば、「自分の部屋はほっとできる」という子供は、2016年度の89.0%から、19年度は85.3%とわずかに減っています。
 「家庭」や「学校」、「地域」や「職場」、さらには「インターネット空間」でも同様の傾向が見られました。
 結局、「どこにも居場所がない」という割合は、16年度の3.8%から19年度は5.4%に、わずかですが上昇していました。

 もう一つ、19年度の数字で見ると、「何でも相談できる人がいる」という場所は、「家庭」(58.8%)、「学校」(同57.7%)などですが、「どこにも相談できる人がいない」は21.8%でした。
 「困ったときに助けてくれる人がいる」場所は、「家庭」(77.4%)、「学校」(65.6%)でした。

 そして、居場所の数や相談できる人、助けてくれる人の数が多いほど、その子供は自己肯定感が高く、チェレンジ精神が強いこと、将来への希望を持ち、社会貢献の意欲にもあふれていると分析されていました。

 このことと関連すると思われるのが、以前取り上げたことがあるアタッチメント(愛着)理論です。
 養育者(母親であることが多い)と子供の間に情緒的関係が強く結ばれていると、養育者が安全基地になることで子供の中に安心感が育ち、自律性や共感性など健全発達の基礎になります。
 外の環境にも興味を持ち、挑戦したりすることができます。失敗しても戻る場所(安全基地)があるので安心できるわけです。

 「子供・若者インデックスボード」に示されたデータは、こうしたアタッチメントの重要性を示しているとも言えます。
 それだけに、子供・若者が安心できると感じられる居場所がわずかでも減っているとしたら、国と社会全体で取り組むべき重要課題だということです。

参照:内閣府「子供・若者インデックスボードとは」