青少年事情と教育を考える 208
孤独感の背景に未婚の増加や家族関係の希薄化がある?

ナビゲーター:中田 孝誠

 前々回と前回は、コロナ禍を経験した高校生の国際比較調査を取り上げました。

 日本の高校生は、「落ち込む」ことはあるものの、日常的には他国に比べて感情が安定していました。
 また、日本の高校生は、家族・親との関係が良好で、コロナ禍前の調査に比べてもその割合が高くなっているという結果が出ています。ただ、「自分の将来に不安を感じている」割合が高くなっていました。

 一方、最近は孤独感、孤立感を抱いている若者が増えているともいわれていますが、その実態を把握するために内閣府が実施した「人々のつながりに関する基礎調査」の結果が4月に公表されています。
 回答したのは全国の16歳以上の男女約1万1千人です。回答者全体では、孤独感が「しばしばある・常にある」は4.5%、「時々ある」は14.5%でした。

 これを年代別に見ると、16~19歳は3.4%と12.7%です。それが20代(20~29歳)になると7.7%と18.6%、30代(30~39歳)でも7.9%と16.6%で割合が高くなります。
 10代、20代、30代と、孤独感が増えていることがうかがえます。

 孤独感を感じる要因の一つに「未婚」があります。
 未婚の人は孤独感が「しばしばある・常にある」が9.6%、「時々ある」が20.5%に対して、既婚者は2.4%と11.2%です。配偶者と死別したか離別したかによっても、離別した人のほうが孤独を感じやすいという結果でした。

 また、「同居人がいる」「不安や悩みを相談する相手がいる」といった人は、そうでない人より孤独を感じにくくなっています。
 この他、「地域社会との交流がない」人ほど、孤立感を深めるということも明らかになりました。

 前回と前々回取り上げた高校生調査では、最近「寂しい」と感じた日本の高校生は調査した4カ国(日本、米国、中国、韓国)の中では最低でした。
 そして最初に述べたように、日本の高校生は、コロナ禍の後に家族との関係が良くなっています。

 もちろん二つの調査結果を単純比較することはできませんが、少なくとも結婚や家族のつながりが孤独や孤立を和らげていることは確かだと言っていいのではないでしょうか。

 そうだとすれば、最近の若者の未婚化、また家庭内における児童虐待などの問題をはじめとする最近の結婚や家族関係、さらに地域社会とのつながりについて、その意義を見つめ直す必要があると思います。