どうなる米朝首脳会談、
朝鮮半島の今後の行方は?【後編】

(U-ONE TV『KMSビューポイント』第37回より)

ナビゲーター:木下 義昭

 今回の米朝首脳会談の最大の焦点は、北朝鮮の「完全非核化」です。
 北朝鮮の「非核化」は、朝鮮半島全体の非核化を意味しています。すなわち、在韓米軍の完全撤退を目指しているわけです。ですから、まずは自国の体制保証が前提です。そして、非核化は段階的に行い、制裁解除、休戦協定、そして平和条約の締結に至るというのが北朝鮮のシナリオなのです。

 北朝鮮の本音は、核施設を保存・隠蔽しながら、時間をかけて米国と韓国から有利な条件を引き出すことです。核査察の引き延ばしをしながら、米国本土への攻撃が可能な状況をつくり出すためにICBM(大陸間弾道弾)の性能を高めるという考えを今も持っているのです。
 当面は南北の2体制を維持しながら、主体思想・社会主義国家としての体制を強化し、将来は、事実上、北朝鮮が韓国をコントロールするという考えが基本にあるのです。

 一方、米国は「北朝鮮の完全な非核化」を目指していることは言うまでもありません。完全な非核化の完了後に、制裁解除、体制保証、そして平和条約の締結という考えです。
 しかし、韓国側の強い依頼もあり、「完全かつ検証可能で不可逆的な核解体」という、いわゆるリビア方式を採るかどうかはまだはっきりしていません。
 このように米朝両国の「せめぎ合い」は今も激しく行われています。

 文在寅韓国大統領は、もともと北朝鮮に近い人物です。金委員長は、文大統領をうまくコントロールして、北朝鮮優位の「統一コリア」の実現を目指しています。文大統領の動きも警戒して見ていかなければなりません。

 「米朝首脳会談」を希望したのは金委員長です。そのような意向を韓国特使から聞いたトランプ米大統領は38日に「よし、会おう」と即断したわけです。
 対決から融和へと戦略転換した金委員長に対し、一方のトランプ大統領を突き動かしたのは、持ち前の「取引好き」と「功名心」でしょう。歴代大統領がさじを投げた懸案を解決して支持率を上げ、中間選挙に勝つためでもあるでしょう。北朝鮮問題の解決は、外交上のレガシー(偉業)となり、歴史に名前を残す大統領となることが可能だからです。

 会談が成功する、しないに関わらず、長い目で見たとき、朝鮮半島の今後の行方について、以下の7点が重要なポイントとなってくるでしょう。 

①北朝鮮の「完全非核化」の決定と、完全な検証を実行すること。
②在韓米軍は、北朝鮮の完全非核化、さらには、南進の脅威がなくなるまで撤退しない。
③北朝鮮の民主化を促進させる体制を米国、韓国、日本がつくる。
④韓国の指導者が中国・北朝鮮寄りにならないように、米国が外交的・軍事的・経済的に監視し、それを日本が支援する。
⑤将来の「統一コリア」が民主的国家となるように、米国を中心にサミット参加国のG7国家が環境づくりをする。
⑥以上の流れの中で、日本人拉致問題を解決し、ミサイル問題も解決する。その上で日朝国交正常化を図る。
⑦米朝会談が決裂したとしても、何度でもお互いに説得を試み、軍事的行動を取らないようにする。

 トランプ米大統領の周りは、ペンス副大統領、ボルトン国家安全保障問題担当補佐官、ポンペオ国務長官など、外交・軍事の専門家ががっちり固めています。

 米中は互いを「仮想敵国」と捉えています。両者にとって「北朝鮮問題」は解決すべき前段階の課題です。北朝鮮問題を解決しないと次の段階に進まないのです。

 日本も朝鮮半島への長期的戦略をきちんと立てて対応すべき重要な時を迎えています。        


(U-ONE TV『KMSビューポイント』第37回「どうなる米朝首脳会談、朝鮮半島の今後の行方は?」より)

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