神様はいつも見ている 39
~小説・K氏の心霊体験記~

徳永 誠

 小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」をお届けします(毎週火曜日22時配信予定)。
 世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。

第7部 霊界と共に生きるわが人生
2. 善霊を装う悪霊

 霊と交流するときに難しいのは、時に霊が間違ったことを指導する場合があるということだ。
 時に善霊を装って悪霊が暗躍し、間違った誘導や指示をすることがあるのだ。

 前身が人間であった霊は、自分の知恵のレベルで物事を判断し、神様の指示ではないことを伝えてくるということもある。

 神様の摂理が1段階上がることで、それまでの指示とは違った内容を示してくることもある。
 そんなときは、前と同じことを続けていると、かえって神様の願いとずれてしまうのだ。

 私の場合、それは私の家系の問題から1段階飛躍しなければならない時期に起こった。

 統一教会(現・家庭連合)に入会したとはいえ、基本的に私の信仰のベースは神道だった。
 そしてその頃の統一教会ではまだ霊の分立を行う役事が始まっていなかった。
 だから私は、引き続き母を通して霊的な整理や指導を受けていたのだ。

 私が統一原理を学び始めて1年がたった頃のことだ。ある霊が母に入って、私に諭すように語った。

 「あなたはよくやってきた。神様の願いに十分に応えてきた。今後は、統一教会のことから少し離れてもいい」

 「どういうことでしょうか?」

 私は驚いて聞き返した。

 「あなたには特別な使命がある。それは神道を復帰する使命である。だから統一教会へ行くよりも、神道の信者を救うために、こちらでやった方がいい」

 私は霊の言葉に違和感を覚えた。

 須佐之男大神(すさのおのおおがみ)や私の守護神ならば理解できるが、先祖の霊なのか何の霊なのか分からない霊がそこまで言うのはおかしいと感じたからだ。

 「本当にあなたは神様なのですか?」

 するとその霊は、私を脅すようなことを言い始めた。

 「あなたがこれ以上、統一教会の信仰を続けたら、あなたの母親の寿命が縮まる。そうなってもいいのか」

 その言葉を聞いて、私はますます疑念を抱いた。

 「本当に、天の神様がそう言ったのですか?」

 そう尋ねると、その霊は黙り込んだ。
 私はもう一度、聞いてみた。

 「本当に、天の神様がそう言ったのですか?」

 答えはなかった。
 それで、もう一度、3回目の質問をした。
 すると、それまでとは違った雰囲気が霊に漂ってきた。

 「天の神様は」

 その声は威厳に満ちていた。

 「統一教会を離れることを願ってはいない。世界の救いを願っている」

 私はその言葉を聞いて、前の霊は善霊ではなく、悪霊であることを悟った。

 私は以前、妻を復帰するために祈祷条件を立てた時、会社の同僚が毎日夜の飲み会に誘ってきたことを思い出した。

 あの時も、私の条件を崩そうと、悪霊が誘惑してきた。
 今回も、悪霊が善霊を装って、私が統一教会で本格的に活動することを邪魔しようとしているのだ。

 私はそのことによって、ますます統一教会に神様の願いがあるということを確信したのである。

 そんな時、私は夢を見た。

 目の前には、広大な海が広がっていた。波が永遠の時を刻むように、浜辺の砂に寄せては返している。

 はっと気付いた時、そこには、私と文鮮明(ムン・ソンミョン)師が立っていた。

 なぜかは分からないけれど、私は神棚を抱いていた。
 かなり大きな神棚だったので、重いはずだったが、その時は重さを感じないほど軽かった。

 神棚と私は強い絆で結ばれている気がした。神棚を持っていると、なぜか不安が消えて安心できるのだった。

 文師は、そんな私を見つめて、少し困ったように、「それはもう要らないよね。いったん置きなさい」と言った。

 私は戸惑い、なぜか恐れを感じていた。
 この大切な神棚を捨てられてしまうのではないか、壊されてしまうのではないかと…。
 もしそうなったら、自分の心が無くなってしまうような焦燥感を覚えた。

 「文先生、これは私が子供の頃から家にあった大切なものです」

 「大切なものだから、いったん置いたらいいよ」

 私は、それでも神棚を手放す決心がつかなかった。

 「じゃあ、私が置いてあげるよ」

 そう言って文師は、持っていた棒で砂浜に線を引いた。

 砂浜なので、普通はぐにゃぐにゃ曲がった線になるはずだが、文師が引いた線は、幾何学模様のように正確な直線だった。

 棒で引かれた線を中心に砂浜が二つの世界に分けられていた。
 その線は、全く別の二つの世界、地上界と霊界の国境線のように見えた。

 「さあ、それを渡しなさい」

 文師は、私の手から神棚を取ると、線の向こう側に置いた。

 その瞬間、私の中に何かが反転するように劇的な変化が生じたのを感じた。意識が鮮明になり、気分はすっきりとしていた。

 「心配するな。時が来たら、返してやるよ」

 夢はそこで終わった。

 目が覚めてから、あの夢はどういう意味があるのだろうかと、私は考え込んだ。

 文師は、「霊的なことを、いったん切りなさい」とおっしゃりたかったのではないか。

 私が悪霊にだまされそうになったのも、あまりにも霊的なことに接してきたからだ。だから、いったんそこから引くことを教えたかったのではないか。

 実際、霊能者と呼ばれる人間が悪霊によって惑わされてしまうケースも少なくない。

 私は、夢の内容を警告と受け止め、その後しばらくは、霊的なことに一切関わらないようにした。

(続く)

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 次回は、「須佐之男大神と天照大御神」をお届けします。