2022.05.31 22:00
神様はいつも見ている 32
~小説・K氏の心霊体験記~
徳永 誠
小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」をお届けします(毎週火曜日22時配信予定)。
世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。
第5部 文鮮明師との出会い
3. あのかたでなければ人類は救えない
初めての韓国訪問、初めての文鮮明(ムン・ソンミョン)師との出会いだったが、私にとっては散々な体験となった。
帰国後も私は少し気落ちしていた。
だからと言って、統一教会(現・家庭連合)に対して疑念が湧いたり、文師に対する信仰心を失ったりしたわけではない。
要は勝手な思い込みを背負って独り相撲をしていた格好だった。
こういう展開も何かしらの意味があるものだ、と私は自分に言い聞かせた。
しかし、もやもやした思いは残っていた。
やはり幼い頃から導いてくれた神道の神様に聞いてみるほかはないだろう。
私は帰国報告を兼ねて、母の神道の教会を訪ねた。
「おや、風邪でも引いたのかい? 顔色が良くないね」
母は、心配そうに声をかけてくれた。
「いや、ちょっとね。韓国での食事が合わなくて、何日か飲まず食わずで過ごしたからね」
「そういや、あんたは好き嫌いが多いからねえ」
母は自ら納得したようにうなずきながら、「なら、あんたの好きな物を作ってあげるから、今日はたくさんお食べよ」と言った。
私は母の心遣いがうれしかったが、それよりも神様に報告することの方が気がかりだった。
「お母さん、ちょっと神様に報告したいんだけど」
「分かった。2階で待っといて」
間もなく母は、神様のお告げを受けるために、衣装を着替えて祭壇に敬拝した。
するとその瞬間、母に神様が入った。
母が神懸かりになる時を何度も見ているので、母の様子を見てすぐに神様が入ったことが分かった。
ただ、神懸かり状態の母には、どの神様が降りてくるかは分からない。
大体は、守護霊の神様かわが家を見守ってきた神様なのだが、時には先祖の霊などが出てくることもある。
「どちらの神様ですか?」
私が尋ねると、母の口を使って、すぐに返答があった。
「わしは金剛龍王大神(こんごうりゅうおうおおがみ)じゃ」
姉ほどではないが、私も長年の神道の信仰から霊的なものを見ることができるようになっていた。
守護神の金剛龍王大神は、私が動けば、どこへでも共に行動した。
金剛龍王大神もまた、私と一緒に韓国に行き、文師と会っていたのだ。
金剛龍王大神の印象はどうだったのだろう。
私自身は思っていたイメージとあまりに違っていたので幻滅し、散々な印象だったが、果たして金剛龍王大神はどう思ったのだろうか。
それで私は、自分が文師に会った時の印象を正直に述べた。
神様の前でうそをついてもすぐに分かってしまう。正直に語るしかないのだ。
私の話を聞いた後、金剛龍王大神は少し沈黙した。
「あのようなおかたと会ったのは初めてだった」
「え?」
私は驚いた。
すぐにはその言葉が理解できなかった。
「何千年の間で初めて見た。あのおかたでなければ人類を救えないと思う」
私の受けた印象と天地の開きがあった。
「どうして、そう思われたのですか?」
「おぬしたちは、文師の表面的な姿しか見えないだろうが、わしはあのかたの地上における姿だけではなく、霊界における姿も見える。それだけではない。その血と汗と涙でたどられた道が見えるのだ。かつてどんな聖人も、あのかたほどの苦労の道を歩まれたことはなかった。わしも、多くの人々を見てきたが、あのかたほどの人間は初めてだった」
私は、神道の神様である金剛龍王大神が文師の偉大さについて語るのを聞いて、衝撃を受けた。
それほどのおかたなのか…。
それほどのおかたなのに、私にはやくざの親分のようにしか見えなかったのか。
私は、自分が長年信仰を続けてきたにもかかわらず、知らず知らずのうちに傲慢(ごうまん)になっていたのではないかと反省した。
もっと謙虚になって、人間的な目ではなく、神様に通じる思いで、見なければならないと悟らされた。
金剛龍王大神は切々と訴えた。
「あのかたには長生きしてもらわなければならぬ。もっと食べ物に気を付けていただきたい。もっと寝る時間を取っていただきたい(文師は2、3時間しか寝ておられないという話だった)。そして、1年でも1カ月でも、1日でも1分でも、長く生きていただかないと困る」
長生きしてもらわないと、世界の未来が大きく変わってしまいかねないと言うのだ。
「あのかたが長生きしなければ、この世界の救いはもっともっと時間がかかってしまうだろう。そのためにも、あのかたにはもっともっと長生きしていただきたい」
金剛龍王大神は、統一教会の教義である統一原理の内容も知っていた。
おそらく私を通してそれらの事柄を知り、それが人類を救うために絶対に必要な真理であること、それを解き明かした文師が世界を変えることができる、唯一のおかたであると考えたのだろう。
金剛龍王大神は、人類歴史を変えることができるおかたである文師とその妻である韓鶴子(ハン・ハクチャ)女史が生きている時代に、全てのものを終えてしまわなければならないとも語った。
「真の父母(文鮮明・韓鶴子夫妻)の時代だけで成さなければならない」
この時は、私はまだ金剛龍王大神の言うことがよく分からなかった。
しかし後に、文師は霊界に行かれるが、その後継者である韓鶴子女史の時代に全てのことを完了させなければならないという、その言葉の背景を知ることになる。
人間始祖であるアダムとエバが堕落することによって、彼らは偽りの父母になってしまった。そして子たる人類は悪魔、サタンの血筋を引いてしまったのである。
文師夫妻には、真の父母として、その全ての過ちを清算して全人類を生み変えていかなければならないという使命がある。金剛龍王大神はそのことを知っていたのだろう。
そしてこの頃の私は、文師にしか関心を寄せていなかったが、金剛龍王大神は韓鶴子女史についても言及していた。
「このかたも、文鮮明師と同じように勝利されたかたである」
文師が霊界に行かれた後、後継者となられた韓鶴子女史の世界的な活躍を見れば、それは一目瞭然であった。
金剛龍王大神が語った内容は、まさに予言的なものだったのである。
(続く)
---
次回は、「絶対に祝福を受けなさい」をお届けします。